【JA実践事例紹介】多様化する組合員とのつながりづくり(前編~兵庫県JA兵庫南)岩﨑真之介一般社団法人日本協同組合連携機構

岩﨑真之介
一般社団法人日本協同組合連携機構 基礎研究部 副主任研究員

JA兵庫南マスコットキャラクター「ふぁ~みんくん」
JA兵庫南マスコットキャラクター「ふぁ~みんくん」

正組合員の世代交代や准組合員比率の上昇、女性組合員の増加、一部の農業経営体の大規模化と、その一方で進む農との関わりが薄れた組合員の増加。JAの組合員の多様化を表すキーワードは例に事欠かない。それぞれのJAが、多様化する組合員の実状を把握し(注)、それを踏まえた組合員との(あるいは組合員同士の)つながりづくりに取り組んでいく必要がある。 本シリーズでは、2回に分けて、組合員とのつながりづくりにかかるJAの実践事例を取り上げる。1回目の本稿では、都市的地域に位置する兵庫県JA兵庫南の取り組みを紹介する。

支店再編と准組合員数の急増

JA兵庫南は、1999年4月に旧7JAの合併によって設立された。エリアは兵庫県明石市(魚住町以西の区域)・加古川市(南部の4町を除く区域)・高砂市・稲美町・播磨町の3市2町である。当地域は東側が神戸市、西側が姫路市にそれぞれ面するとともに、臨海地域には多くの工場が立地しており、南部を中心にベッドタウン化が進行してきた。北部は水田地帯であり、大規模農家や営農組合への農地の集積が進展している。特産品としてメロン、トマト、キャベツなどがあり、近年はスイートコーンの生産振興にも取り組んでいる。

同JAでは、組合員の多様化がいち早く進行してきた。その最たるものが准組合員の増加である。合併によるJA発足当時、正組合員数は15,164人、准組合員数は16,376人で、後者がおよそ半数を占めていた。その後、組合員加入に力を入れた2000年代後半から准組合員数が急増していき、現在は正組合員1万4,150人に対し准組合員4万8,004人で、全体の4分の3を占める状況となっている。これに加えて、女性組合員の増加や正組合員の世代交代も進んでおり、組合員の構成比は合併当初と比べ様変わりしている。

また、同JAは合併から10年をかけて、経営基盤を強固にするための支店統廃合や生活事業の分社化を進めるなかで、多様化する組合員との関係強化に取り組むことが必要となっていたのである。

基本方針を策定し目指す姿を明確化

そうした状況のなかで、同JAは、2011年に「協同活動基本方針」を策定するとともに、総務部ふれあい広報課を協同活動の全体統括部署と位置づけ、組合員との関係強化に取り組んだ。同方針は、2014年に「くらしの活動基本方針」(以下、「基本方針」)として見直しが図られるとともに、2018年にはアップデートがなされ、現在に引き継がれている。

基本方針では、同JAの「くらしの活動の推進を通じた目指す姿」が明確化されている。具体的には、「次世代を中心とする組合員がJAファンとなって、自分のJAを良くするための意見を出してくれる」という姿、特に准組合員については「地産地消の実践を通じて、地域農業を支える役割を担う」という姿が描かれている。

職員側ではなく、協同組合の主人公である組合員の姿によって「目指す姿」が描かれていること、准組合員についても明確に「目指す姿」が設定されていることが特に重要であるだろう。また、「意見を出す」「地域農業を支える」といった具体的行動が示されているため、組合員や役職員にとって、イメージを共有しやすいものとなっている。

基本方針ではその他にも、「目指す姿の到達に向けたストーリー」として、くらしの活動への参加を単発で終わらせず、それを起点にステップアップしてもらうことの重要性が下図とともに説明されている。さらに、そうしたステップアップと個別の取り組みとの関連を職員に意識させるため、後述の「支店・事業所ふれあい活動」では、個別の活動ごとに作成される企画書の様式に、当該活動が同図のステップ①~③のどの段階をねらったものであるかを記入する欄が設けられている。

JA兵庫南の「目指す姿」へのステップアップのイメージ
JA兵庫南の「目指す姿」へのステップアップのイメージ

また、基本方針では、方針を実効性あるものにするための工夫として、くらしの活動にかかる「実施体制と果たすべき役割」が「支店・事業所」「本店ふれあい広報課」「本店各部署」「常勤役員」「地区選出役員」「女性理事」それぞれについて明確に示されており、これも参考になる点であろう。

工夫あふれる「支店・事業所ふれあい活動」

基本方針の実践における中心的取り組みの一つが、「支店・事業所ふれあい活動」である。これは、支店・事業所ごとにふれあい委員会を組織し、組合員が活動の企画・運営に参画する、いわゆる支店協同活動である。

同JAの支店・事業所ふれあい活動では、活動を必須の活動と任意活動とに分け、必須の活動として①地域清掃活動、②3世代交流活動、③支店・事業所だよりの年3回以上の発行、の3つを実施している。

①地域清掃活動

地域清掃活動は、地域貢献とともに、地域とのつながりを作るきっかけとすることを目的としている。支店周辺の清掃ではJA単体の活動となりがちであるため、支店によっては地域の清掃活動へ参加する形で実施されている。

②3世代交流活動

3世代交流活動は、組合員や地域住民が3世代で一緒に参加できるイベント等を実施するもので、次世代対策や、高齢者も多い正組合員に孫を連れて参加してもらうことがねらいである。活動の準備においては、支店管内の組合員等からなるふれあい委員を中心に行うことが目指されている。イベントの内容を一部紹介すると、サツマイモの植え付け・収穫・焼き芋体験や、ウォーキング、夏祭り・縁日などが多く、七夕には園児と女性会の合同コンサートも開催されている(いずれもコロナ禍前のもの)

3世代交流活動の様子
3世代交流活動の様子

③支店・事業所だより

これらに加えて、支店・事業所ふれあい活動では、支店・事業所だよりもメニューの一つとして位置づけている。そのねらいは、支店・事業所だよりを、事業のプロモーションではなく、支店・事業所と組合員をつなぐためのツールとして発行することにある。ねらいをより徹底させるため、「組合員・地域利用者とのコミュニケーションづくりに貢献」した支店・事業所だよりを表彰するコンクールも毎年実施されている。

支店最優秀賞を受賞した米田支店「よねだナビ」
支店最優秀賞を受賞した米田支店「よねだナビ」

2021年度に表彰された米田支店「よねだナビ」では、支店の各職員の担当業務や担当地区とともに、それぞれの趣味や特技が、特徴をとらえたかわいらしい似顔絵とともに紹介されている。どのコーナーにおいても職員の個性が読み手に感じ取れるような工夫がなされており、支店とその職員に対する親しみを喚起するものとなっている。過去には、支店管内の農業者を独自に取材して紹介するシリーズを発行した支店が受賞したこともある。いずれも、それ自体がコミュニケーションツールとなるだけでなく、組合員と職員、あるいは組合員同士の会話の話題ともなっている。

以上が必須の活動であり、多くの支店・事業所では、これらに加えて任意活動として年間複数回の活動(農業体験、施設見学、親子金融教室など)を実施している。

同JAでは、こうした活動が、15の支店だけでなく、農産物直売所8店舗、営農センター4か所、さらには高齢者福祉施設3か所のそれぞれにおいても実施されている。直売所や高齢者福祉施設では、こうした活動を展開することで、利用者にJAのことをよく知ってもらい、組合員加入を検討してもらうきっかけとしている。営農経済センターについては、芋ほりや収穫祭を行い、それを生産部会や集落組織にも手伝ってもらうことで、職員が彼らとの関係を深めることにつながっている。支店と営農経済センター(や直売所)が共同で活動を行うこともあり、支店職員と各事業所職員とが一緒に仕事をしてつながりや相互理解を深める貴重な機会になっている。

また、同JAでは、前述の支店・事業所だよりコンクールの他に支店・事業所表彰制度が用意されており、そこでは事業実績に加えてくらしの活動も評価対象となっている。第1位となった支店・事業所には各職員に特別手当が支給されており、職員の動機づけ方策の一つとして機能している。

以上の支店・事業所ふれあい活動以外にも、同JAでは、メンバーの大部分が准組合員で主にサークル活動を行っている女性会や、固定メンバーで年6~7回の講座を受講するレディースカレッジ(女性向け)および男ディカレッジ(男性向け)、組合員ギターサークルふぁ~みんず、組合員ゴルフサークルホワー!!みんずなど、組合員の対象やステップアップの段階を意識した非常に多彩な活動が実施されている。

レディースカレッジの様子
レディースカレッジの様子
対象とステップアップを意識したJA兵庫南の組合員対応の体系
対象とステップアップを意識したJA兵庫南の組合員対応の体系

准組合員に学びと意思反映の機会を提供する利用者懇談会

次に、准組合員対応の中心的な取り組みであるJA利用者懇談会(以下、「懇談会」)についてもみていく。この懇談会は、准組合員比率が高まるなかで、准組合員がJAのことを学び、JAに対して意思反映を行うための場として、同JAが2013年度に開始したもので、2022年度で10年目を迎える。

懇談会では、毎年、同JAの准組合員30人(各支店2人ずつ)を委員に委嘱し、1年間で6回の懇談会を開催して、JAについての学習や意見交換を行っている。委員はJAの広報誌等で募集しており、再任は認めていない。

2019年度の計画(例年の内容を踏襲)から、各回の内容を見てみよう。第1回の懇談会は本店で開催され、同JAの概要やJAの仕組みなどについて学習する。このうち、JAの仕組みについてはJA兵庫中央会に講師を依頼しており、中央会職員がスライドショーを用いて、協同のメリットや、協同組合と株式会社との違い、JAの総合事業などについて平易に解説している。特徴的な点として、図のような形で、准組合員の役割について、「地域農業の理解者」として「食べて応援」「作って応援」を実践してもらうことが期待されることを伝えている。

第1回懇談会にて紹介されたパワーポイント
第1回懇談会にて紹介されたパワーポイント

続く第2~5回では、委員がJAのさまざまな施設を訪れ、事業について学んでいる。具体的には、信用・共済事業(支店)、営農経済事業(営農センター)、利用事業(カントリーエレベーター)、福祉事業(高齢者福祉施設)といったテーマとなっている。

方法の特徴として、第1~5回では、毎回、見学や講義の後に委員同士の意見交換の時間が設けられている。この意見交換はグループディスカッション形式で行われ、委員が5人ずつ6つの班に分かれて議論を行っている。各グループのメンバーは1年を通して固定される。最初の2年間は意見交換を学校形式で行っていたが、意見が出にくかったため3年目からグループディスカッション形式に変更したところ、和気あいあいとした雰囲気のなか非常に活発な議論が行われるようになった。各回の最後には、グループごとに意見をとりまとめて発表を行っている。

懇談会でのグループディスカッションの様子
懇談会でのグループディスカッションの様子

そして第6回には、第1~5回で委員から出された意見を「提案書」としてとりまとめ、組合長へ提出するところまで行っている。JA側も、受け取った提案書に対する回答を、提案項目ごとに作成して返答している。さらに、これらの提案と回答は、JA広報誌の特集ページに掲載して広く組合員へと周知されており、准組合員もJA運営に関与していることを認識してもらうのにも役立っている。

JA兵庫南広報誌『ふぁ~みん』2022年6月号p4-5 「令和3年度JA利用者懇談会提案に対するJA回答」
JA兵庫南広報誌『ふぁ~みん』2022年6月号p4-5 「令和3年度JA利用者懇談会提案に対するJA回答」
JA兵庫南広報誌『ふぁ~みん』2022年6月号p4-5 「令和3年度JA利用者懇談会提案に対するJA回答」[PDF]

提案書の内容はJAの事業や施設に関する質問・要望が主で、例えば2021年度提案書では「生産者が高齢化していますが、JAでは、どのような後継者対策をしていますか」という質問がなされ、JAからの回答として、新規の農業者確保の取り組み「かこがわ育農塾」や若手農業者の組織である青壮年部が紹介されるとともに、同JAが募集している援農ボランティアへの参加の呼び掛けも行われている。

懇談会で出される意見について、同JAの野村隆幸代表理事専務は「毎回、いただいた意見を重く受け止めて、対応を検討しています。『なるほど、そんなふうに見られているんだな』と感じる、気づきの多い貴重な意見をいただいていますし、懇談会でいただいた意見の背後には、同様の意見を持った多数の准組合員がいるものと認識しています」と述べる。

各班のメンバーを固定したグループディスカッション形式は、メンバー同士のつながりづくりにもつながっている。同JAは、そうした委員同士のつながりや、委員とJAとのつながりを継続的なものとするため、OG・OBが参加し懇談する場として2018年度に同窓会を行い、一定の手ごたえを得ている。

准組合員の意思反映の取り組みは全国のJAで徐々に拡大しているが、同JAのように、そこに学びの要素を本格的に取り入れているケースや、提案書作成とそれに対する回答というところまで徹底しているケースは珍しいのではないだろうか。こうした工夫は、その後の同窓会の実施も含め、委員を経験した准組合員との関係を一時的なものに終わらせず、コアな准組合員として継続的な関係性を築くことを目指すものとみることができるだろう。

おわりに

以上、JA兵庫南の取り組みをみてきた。同JAは、くらしの活動にかかる基本方針を策定するとともに、多様化する組合員に対し、支店・事業所ふれあい活動やJA利用者懇談会を中心とする、多彩な活動によって関係強化に取り組んでいた。それらの特徴は既に指摘してきたためここで改めて繰り返すことはしないが、それぞれの活動においてはいくつもの工夫が施されており、いずれも参考になるものであったのではないだろうか。次回は、農村的地域のJAの実践事例を紹介したい。

※後編(10月配信)では、群馬県JA邑楽館林の取り組みを紹介します。

注)組合員の多様化の実状については、下記の参考文献にて、JAに対する意識や、事業利用の状況、活動・組合員組織への参加状況などの切り口から、大ぐくりにグループ分けして把握する試みが行われており、参考になる。

参考文献
小林元『次のステージに向かうJA自己改革 短期的・長期的戦略で危機を乗り越える』P59、家の光協会、2017年
増田佳昭編著『つながり志向のJA経営 組合員政策のすすめ』西井賢悟「組合員の意識と行動―アクティブ・メンバーシップからの接近―」P44~71、家の光協会、2020年

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