【協同の歴史の瞬間】〔第88回〕1935(昭和10)年6月21、22日京都帝国大学農学部において「第二回産業組合問題研究会」開催される監修/堀越芳昭 山梨学院大学 元教授

監修 堀越芳昭 山梨学院大学 元教授

堀越芳昭 山梨学院大学 元教授

今回は第二回研究会の概要とその特徴をみる。特徴の1点目は、第67回帝国議会の影響を大きく受けた点。2点目は「その当時の産業組合関係者、研究者、関係行政官等を網羅した」点であった。

第二回研究会の概要

第二回研究会は、1935(昭和10)年 6月21、22日、産業組合中央会と京都帝国大農学部共催で京大農学部において開催された。「開会の辞」を中央会々頭 志立鐵次郎、「挨拶」を京大農学部長 橋本傳左衛門が担当した。第二回研究会は「研究発表」と「討論会」との構成で、研究発表のテーマと発表者、討論会のテーマと報告者、座長は以下のようになっている。

<研究発表>6月21日

1. 商業者と産業組合の問題(神戸商大 平井 泰太郎) 
2. 産業組合経営の問題(京大 大槻 正男) 
3. 組合統制と産業組合の問題(京大 蜷川 虎三) 
4. 産業組合の自主性について(東大 東畑 精一)
5. フランツ・オッペンハイマーの組合論(北大 渡邊 侃)
6. 産繭処理統制の問題(産組製糸連 千坂 高興)

<討論会>6月22日

1. 解題「討議問題の一般的背景について」(東大 那須 皓)
2. 報告①「農産物販売統制と産業組合」(帝国農会 勝賀瀬 質)
  報告②「農産物販売問題と産業組合」(全販連 水野 武夫)
3. 討議1 座長(那須 皓)
  討議2 座長(橋本 傳左衛門)
 「閉会の辞」 千石興太郎(中央会)

第二回研究会の特徴

協同の歴史の瞬間

第二回研究会の特徴は、次の2点に要約されよう。

1点目は第67回帝国議会における法案提出の影響をまともに受けた、という点である。1935(昭和10)年初頭、第67帝国議会に<産繭処理統制法案><米穀自治管理法案><肥料業統制法案>の3法案が提出され、繭・米・肥料という農民にとって極めて重要な品目に産業組合の各事業はどうあるべきかが議論された。研究発表においては、後に長らく京都府知事を務める蜷川虎三は「組合統制と産業組合の問題」、千坂高興は「産繭処理統制の問題」を報告し、さらに討論会のテーマは「農産物販売問題と産業組合」と設定されるなど、時代の動きに対応しようとする姿勢をみることができる。

2点目は新しく参加する大学、研究所、役所が多くみられた、ということである。大学等をみると新たに東北大学が加わり(6帝大24名)、さらに大阪商大・神戸商大(2公立大5名)、私立大では慶大・明大・立命館大が加わり(法政大含めて4私大6名)、7高農2高商12名、教育分野の東京高師・広島高師からも3名が参加している。

また、大原社会問題研究所2名、帝国農会1名、役所では大蔵省1名、商工省2名が新しく参加している(農水省4名)。中央会・産組中金等中央機関42名、30道府県庁・支会133名 計235名となっている。第一回研究会の参加者は計161名であったので大きく増加しており、「その当時の産業組合関係者、研究者、関係行政官等を網羅した」(『産業組合中央会史』)といえよう。参加者数・参加者の内訳等をみると、1943(昭和18)年まで合計6回開催された研究会の中で最も充実した研究会だったといえよう。

参考文献/『第二回産業組合問題研究会報告書』(産業組合問題研究会、高陽書院、1936年)
『日本協同組合学会20年史』(日本協同組合学会、2000年)
『産業組合中央会史』(全国農協中央会、1988年)

公開日:2023/03/01 記事ジャンル: 配信月: タグ: /

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