【提言】協同のネットワークづくりのために北川太一 摂南大学農学部 教授

北川太一 摂南大学農学部 教授

きたがわ・たいち

きたがわ・たいち/1959年、兵庫県生まれ。鳥取大学農学部助手、京都府立大学農学部講師・助教授、福井県立大学経済学部准教授・教授を経て、2020年4月より現職。勤務校では、「協同組合論」「食農共生論」などを担当。福井県立大学名誉教授。放送大学客員教授、日本協同組合学会会長を務める。主な著書に『新時代の地域協同組合』(単著、家の光協会)、『協同組合の源流と未来』(分担執筆、岩波新書)など。

労働者協同組合法は、組合員が出資し、意見を反映し、組合員自らが事業に従事する「協同労働」の考え方をベースとして、持続可能で活力ある地域社会の実現をめざすと定められている。JAも、こうした考え方を生かしながら、地域における協同のネットワークづくりに取り組むことが期待されている。

労働者協同組合法の施行

2020年12月、労働者協同組合法が成立し、今年10月から施行された。森林組合法以来42年ぶりの協同組合に関する法律ということで注目されているが、労働者協同組合法は、JAにとってはもちろんのこと、JAを含む協同組合が地域のネットワーク(つながり)づくりを進めていくうえで重要な内容が示されている。法の第1条(目的)は、次のとおりである。

「この法律は、各人が生活との調和を保ちつつその意欲及び能力に応じて就労する機会が必ずしも十分に確保されていない現状等を踏まえ、組合員が出資し、それぞれの意見を反映して組合の事業が行われ、及び組合員自らが事業に従事することを基本原理とする組織に関し、設立、管理その他必要な事項を定めること等により、多様な就労の機会を創出することを促進するとともに、当該組織を通じて地域における多様な需要に応じた事業が行われることを促進し、もって持続可能で活力ある地域社会の実現に資することを目的とする。」

重要なポイントは、二つである。一つは、組合員が出資し、意見を反映し、組合員自らが事業に従事する「協同労働」の考え方が示されていることである。

JAの女性組織においても、長年の活動が加工グループをはじめとする目的別の組織を生み、それが起業化するケースがみられる。あるいは、JAの生活指導員や教育文化活動を担当した人が、退職後地域に戻り、健康、福祉、生活支援、交流、食農教育等の分野で、人や団体をつなぐネットワーク化をはかる例もみられる。そこには、言葉こそ必ずしも意識されていないものの、協同労働の考え方が生かされている。

協同のネットワークを育むために

二つには、「持続可能で活力ある地域社会の実現」とあるように、地域社会における協同組合の役割を定めていることである。

1995年に採択された協同組合原則(協同組合のアイデンティティに関するICA声明)の第7原則では、「地域社会への係わり(コミュニティへの関与)」が定められ、「協同組合は、組合員が承認する方針に沿って、地域社会の持続可能な発展に努めます」とされた。これを受けて、JA綱領の前文では、「(わたしたちJAの組合員・役職員は)農業と地域社会に根ざした組織としての社会的役割を誠実に果たします」と内外に宣言している。SDGsがめざす「持続可能な開発目標」を待つまでもなく、協同組合は、地域社会とともに歩む組織であることを早くから内外に示しているのである。

JAにとって、地域の活性化は重要な課題である。労働者協同組合法の成立に伴う協同労働の考え方におおいに関心を持ち、それを活用することによって、さまざまな地域の組織・団体とつながり、協同のネットワークづくりに取り組むことが期待される。

公開日:2022/12/01 記事ジャンル: 配信月: タグ: / /

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