【トップ対談23】組合員・地域とともに(下)総合力を発揮して地域共生社会をつくるゲスト/池村 正(滋賀県 JAこうか 代表理事組合長)
ゲスト
池村 正
滋賀県 JAこうか 代表理事組合長
インタビューとまとめ
石田正昭
三重大学 名誉教授
京都大学 学術情報メディアセンター研究員
総合力を発揮して地域共生社会をつくる
JAこうかには5つの子会社・関連会社がある。JAと子会社・関連会社との連携を密にし、「JAこうかグループ」の旗を高く掲げたいという。今回はJA全国大会で提案された「地域共生社会」の実現に向けて、池村組合長の抱負を語ってもらった。
「花野果市(はなやかいち)」に込めた思い
石田:甲賀というと、米と茶の優良産地というイメージがあります。
池村:ご案内のように、「滋賀のコシヒカリ」は毎年「特A」をとっておりまして、米卸の「引き」がとても強い。ということで、JAこうかでは2019年から米の全量買取販売を行っています。集荷数量はおよそ23万袋ですが、受託販売はありません。米卸とは複数年契約を結び、全農滋賀県本部を通して販売しています。買取価格はギリギリまで決めず、高い集荷率を維持するように努めています。
大規模稲作経営者部会、特別栽培米生産部会などの組合員組織があって、良食味米や環境こだわり米の生産だけではなく、低コストで多収の業務用米の生産、飼料米などの水田活用米穀の生産など、多様な担い手が経営規模や地域性に合わせて「選択」できる米づくりを推進しています。高温耐性品種の「(早生)みずかがみ」、業務用契約米の「(中生)大粒ダイヤ」「(晩生)きぬむすめ」、業務用多収品種の「(晩生)あきだわら」 などを導入し、作期分散にも配慮しています。
もう1つ自慢したいのが「滋賀羽二重糯(もち)」です。とくに甲賀町佐山で生産される糯米は、1952(昭27)年から89(昭64)年まで、昭和天皇へ正月の餅用として献上された逸品です。佐山は古琵琶湖層(古代琵琶湖は三重県伊賀地方から甲賀地方を経て現在地へ移動したが、その時代に形成された地層群)の湖底が露出し、土壌が非常に粘っこく、糯米の生産に適しています。佐山では、農業法人(有)甲賀もち工房「甲賀もちふる里館 もちもちハウス」を設置し、うどんやパスタなどを含めて、もち加工品を製造・販売しています。軽食コーナーもあります。その代表者をJA職員OBが務めており、彼のアイデアが隅々にまで生かされた農村起業の成功例です。
茶については、県内一の生産量を誇る「土山茶(かぶせ茶)」と、日本五大銘茶の1つに数えられる信楽の「朝宮茶(煎茶)」があって、古くからの伝統を守っています。しかし、残念ながら、茶農家数と茶園面積は少しずつ減少しています。そうしたなかで、良質茶づくりをめざして、ほ場の土壌診断や茶園の改植を進めるとともに有機栽培茶の生産にも取り組んでいます。また、販売面では、リーフ茶のほかに、ペットボトルやティーバッグ、お茶ジャム、紅茶のソフトクリーム、さらには全国植樹祭の開催に合わせて、国産の間伐材を30%以上使用した紙製飲料缶「カートカン」の「近江の茶」を開発し、販売を開始しました。
石田:カートカンの絵柄が「はなやか」です。その一方で「こうか型園芸産地」づくりにも取り組んでおられますね。
池村:2002年に農産物直売所「花野果市」を開設し、現在は3つの店舗と湖南市の「ここぴあ」(指定管理施設)の運営を行っています。花野果市という名称にしたのは、米と茶に加えて、花き、野菜、果樹の生産振興を図り、直売所の「はなやか」さを演出したかったからです。
2011年に10年間の「JAこうか長期構想」を策定し、園芸チームをつくって営農指導体制の強化を図りました。同時に「甲賀のゆめ丸商忍隊」という販路拡大チームも発足させ、京都市場への出荷、ネットショップ(ヤフー)の開設、量販店(平和堂)9店舗でのインショップ出店、コープしがとの地場産提携、東京「ここ滋賀」での「近江の茶」のPRなどを行ってきました。また、市内飲食店を対象に「地産地消協力店」を組織し、現在28店舗まで拡大しています。
「地域の困りごと」を解決する
石田:指導から販売までの一貫体制を構築したわけですね。
池村:そうです。新しい価値の創造をめざして、米を含めて「忍(しのび)」シリーズを開発し、ブランド化を図りました。野菜については、レギュラー品とは別に、一定の栽培基準と商品規格をクリアした商品に対して、例えば、忍葱(しのぶねぎ:白ネギ)、忍玉真丸(にんたままんまる:タマネギ)、忍忍人参(にんにんにんじん:ニンジン)などの名称を付しています。
石田:絶妙なネーミングですね。パッケージにはイメージキャラクター“甲賀のゆめ丸”くんも登場し、「はなやか」さを感じさせます。
池村:それだけではありません。伝統野菜の振興にも取り組んでいます。歌川広重「東海道五十三次 水口宿」でも、かんぴょうを干している風景が描かれていますが、その「水口かんぴょう」をはじめとして、「杉谷なすび」「杉谷とうがらし」「下田ナス」「鮎河菜(あいがな:鮎河は地名でアブラナ科の菜花の一種)」などを「甲賀の伝統野菜」として設定しています。さらにまた、業務用のキャベツ、市場出荷用果樹のブドウ、ナシ、市場出荷用花きのキク、リンドウを重点品目に設定し、生産拡大を図っているところです。
こうしたJAの取り組みを集落座談会「農談会」で説明するほか、「花野果市新規出荷者説明会」「果樹・花きの栽培研修会」「秋・冬野菜の園芸講座」などを開き、副業的農家や自給的農家を対象に生産者の拡大に取り組んでいます。幸いにも、栽培戸数、栽培面積、販売額のいずれも増加基調にあります。
ただ、心配なこともあります。高齢化、人口減少によって地域の活力が低下していることです。その第1は、荒廃農地の拡大です。2020年現在、管内農地面積の1割弱にあたる370ヘクタールが荒廃し、とくに中山間地での進行が止まりません。すでにお話ししたように、管内には38の集落型営農組織がありますが、中山間地のほうが組織数も少なく、農地の集積割合も低くなっています。
受け皿となる担い手がいない。このことに危機感を募らせたのが、中山間地を多く抱える旧甲賀郡甲賀町です。町が「(有)グリーンサポートこうか」という農作業受託組織を設立しましたが、そこにJAも出資参加しています。ただ「グリーンサポートこうか」にしても、集落型営農組織にしても、これ以上の要望に応えることはできません。というわけで、中山間地での受け皿となる「農業サービス事業体」の設立を計画しています。JA100%出資型法人の設立です。
その第2は、空き家が増えたことです。相続人たる子供たちが県外に出て行ってしまい、空き家になっている事例が増えています。草はぼうぼう、家は風を入れないと急に傷みます。というわけで、子会社の「(株)JAゆうハート」が空き家管理事業を始めました。この子会社は労働者派遣事業や介護福祉事業を行っていますが、それに加えて「空き家建物の巡回管理」「草刈り」「家の掃除」「墓の掃除」(いずれも写真での報告付き)などを引き受けています。この空き家管理はJAの資産管理相談の延長線上に位置づけられる事業ですが、甲賀市の「ふるさと納税」の返礼品としても登録されています。
石田:よいアイディアです。希望者が増えるといいですね。
池村:そのとおりですが、「ふるさと納税」で終わらせるわけにはいきません。私どもとしては、第29回JA全国大会で提案された「豊かな地域共生社会」の実現に向けて、甲賀にあってはJAがリードしていきたいと考えています。
「JAこうかグループ」の旗を高く掲げる
石田:地域の生活インフラ機能の一翼を担いたいということですね。
池村:子会社・関連会社には、高齢者介護や空き家管理を行う「JAゆうハート」のほかに、給食・弁当の調理販売を手掛ける「(株)初穂」、自動車の販売・整備を行う「(株)JAオートパルこうか」、ライフラインたるガス供給を担う「甲賀協同ガス(株)」、ケーブルテレビを営み地域情報にも精通している「(株)あいコムこうか」の計5社があって、それぞれが顧客密着サービスを展開しています。
そのうち「初穂」については「コープしが夕食サポート」弁当の製造受託をしており、滋賀県全域に提供しています。ですから、JAの組合員・利用者のなかで宅配弁当をとりたいという方がおられたら、その方に「コープしが夕食サポート」の利用を勧めることがJAの給食事業の拡大につながります。また「オートパルこうか」についても、車の購入者に対してJAの低金利の自動車ローンの利用を勧めることがJAの貸出の増大につながります。
同様のことは、毎月定期検針を行う「甲賀協同ガス」にもあてはまります。この会社の社長によれば、定期検針の際に高齢者の方から「水漏れを直してほしい」とか「電球を替えてほしい」とかの要望が出るそうです。こうした要望が出てくるのも、JAの関連会社という安心感なり、ネームバリューがあるからです。ならば、その安心感に裏打ちされた要望を「ゆうハート」が受け止めようではないか、「ゆうハート」では「花野果市」の移動購買車も走らせているので、ご近所の方に集まってもらい、移動購買も利用してもらおうではないかという話になっています。
コープしがの夕食サポートについても、「初穂」の森本馨副社長によれば、毎月何十食という単位で増えているそうなので、高齢者が好むような「やわらかおかず」「減塩おかず」「8種類のおかず」などを取り揃えていることを、JAの組合員・利用者に積極的にアピールしていこうではないかという話になっています。
石田:高齢者の「困りごと」にまるごと対応する「しかけ」をどうつくるか、そこがポイントになりますね。
池村:そのとおりです。とりわけ、子会社・関連会社を含めて、JAの全事業に横糸を通すような「人づくり」が大きな課題です。JAも、子会社・関連会社も、それ相応のコストをかけて顧客密着サービスを展開しており、情報をいっぱい持っているわけですが、これまでは情報共有が十分だったとはいえません。これからはJAと子会社・関連会社間の連携を密にし、情報共有の量も質も格段に高めていかなければなりません。
こうしたことから、これまでにJAと5社の代表者会議を2回ほど開いてきましたが、今後も協議を進めていき、具体策を詰めていきたいと思います。その最終的な出口は、地域活性化をめざす「JAこうかグループ」の旗を高く掲げることです。これは同時に、JAこうかにおける新しい価値の創造につながると考えています。
石田:「JAこうかグループ」を内外に宣言する。すばらしいアイデアです。ともすれば事業の縦割りが強まるなかにあって、反対に、グループ全体の「事業連鎖」を強調していく。大賛成です。大いに期待しています。
コラム
ふっくら、もちもちのパック入り「赤飯」
お土産に、滋賀羽二重糯を使ったパック入り「赤飯」をいただいた。帰宅してさっそく試食、すぐにとりこになった。ふっくらと炊き上がっているうえ、もちもち感にあふれ、お盆休みで帰省中の子や孫たちにも好評だった。
広報紙『こうか』によれば、JAこうかとお隣のJAいがふるさと(三重県)は「忍者」つながりによる事業間連携を行っていて、今回は、JAこうかの「赤飯」とJAいがふるさとの「白がゆ」を、紅白のコラボ企画として商品化したという。滋賀羽二重糯の魅力を広めることにつながるだろう。
対談で話題となった、甲賀町佐山の農業法人(有)甲賀もち工房「甲賀もちふる里館 もちもちハウス」へ出かけて、昭和天皇に献上された滋賀羽二重糯の加工品を買いたいと思ったが、ホームページによれば9月中旬まで臨時休業中とのこと。きっと佐山産の原料糯が尽きたからではないかと想像している。
【特別鼎談】
JAこうか女性部長・上田和子さんに聞く
トップ対談の途中から、JA女性部長でありJA理事でもある上田和子さんにも参加してもらい、JAこうか女性部の組織と活動について語ってもらった。全国のJA女性組織の参考になると考え、特別に掲載することとした。
上田和子
うえだ・かずこ/JAこうか女性部長・JAこうか理事
「女性活躍」の推進
石田:JAこうかの女性役員は、理事が5人、監事が1人という構成です。このあたりの説明は、池村組合長にお願いできますか。
池村:2022年3月末現在、正組合員は5,754人、そのうち女性は979人で、女性比率は17%です。一方、准組合員は11,063人、そのうち女性は3,692人で、女性比率は33%です。JAグループの女性正組合員比率の目標は30%なので、女性正組合員を増やすことが課題です。
ご指摘のように、女性役員は6人で、全役員の18%にあたります。私が総務部長の時代ですが、2015年の役員改選時に6人体制を実現させました。当時のJAグループの数値目標は「2人以上」でしたが、いずれ「15%以上」になることを見越して、一気に6人体制の実現を図りました。
6人体制ではありますが、監事の1人は女性の員外監事とすることをあらかじめ決めていましたので、残りの5人をどう選ぶかが問題となりました。すべてを理事会推薦枠とすることは難しいので、地区推薦枠を設定しなければなりません。検討した結果、理事会推薦枠を2人、地区推薦枠を3人とすることが決まりました。
地区推薦枠の3人を、地区のローテーションで回すことも考えられますが、実際の運用は難しいことが予想されましたので、最初から地区を決め打ちすることにしました。JAこうかは、ちょうど6地区で構成されていますので、男性監事をとる3地区と、女性理事をとる3地区とに分けました。各地区の推薦委員に集まってもらい、協議したところ、うまい具合に女性正組合員比率の高い3地区が女性理事をとり、そうではない3地区が男性監事をとることが決まりました。事前に予想していた以上にスムーズに決まったという印象です。
石田:よくわかりました。ところで上田さんは理事会推薦枠での選出ですね。
上田:そうです。2012年から理事をさせていただいております。現在は4期目に入っております。理事になる前の5年ほど、JAこうかの女性部長をしておりましたので、合計で15年くらい女性部長と理事を経験していることになります。現在はJAしが女性協議会の会長もさせていただいております。
石田:女性部長の任期は何年ですか?
上田:規約では、1期1年で、再選は妨げないことになっています。女性部の代表として、理事会では女性部の現状と課題について、ていねいに説明させていただいておりますし、反対に、理事会の様子を女性部におつなぎすることもしております。
石田:上田さんは、2017年から「JAくらしの活動」の一環として、男性料理教室「甲賀のゆめ丸クッキング倶楽部」で料理指導をされていますね。その経緯を教えてください。
上田:JAの男性組合員というのは、「男子厨房に入らず」の時代に育った方が多いので、ご家族のためにも、ぜひ料理の仕方を覚えてほしい。そんな思いで「こんにゃくづくり」から始めました。男性料理教室では、「このこんにゃくは僕がつくったんや」とご家族の前で自慢していただき、おせち料理にも必ず加えてくださいねとお願いしました。そうこうしているうちにファンが増えてまいりまして、もっと回数を増やしてほしいという要望も出てくるようになりました。そのなかには『家の光』をとっておられる方もいて、「『家の光』に掲載されたこの料理をつくって、介護施設に届けたい」という申し出もあったりして、話はどんどん広がっていきました。レパートリーも広がりましたし、脳トレとか、体操とかにも関心が広がっていきました。
地産地消に力を入れる
石田:上田さんの教え方がうまかったんですね。
上田:私も農家育ちですので、地のもの、旬のものをつかった料理にこだわりがあります。小さいときから食べてきたものはというと、旬のものばかりでした。母からは「体をつくるには旬のものに限る」とも教えられてきました。
石田:ということは、こんにゃく芋もつくっているわけですね。
上田:そうです。私どもの「地産地消倶楽部」のメンバーのなかには、こんにゃく芋をつくっておられる方が何人かいらっしゃいます。30人ほどの倶楽部ですが、JAの全地区から趣旨に賛同する方々に集まってもらっています。
「地産地消倶楽部」の活動としても、JAから水口のほ場をお借りし、こんにゃく芋をはじめとして、たくさんの種類の野菜をつくっております。また、営農指導員さんに教えていただきながら、「忍葱」や「忍玉真丸」「忍忍人参」などのブランド野菜もつくっております。農家の主婦の集まりですから、いろいろな知識は身に付けておりますが、それだけでは足りないところが多いので、プラスアルファ的に専門的知識を学んでおります。
いつ、だれが作業に出るかという点につきましても、全員集合の場合もありますし、班ごとの場合もあります。このあたりは営農指導員さんと相談しながら決めております。収穫物は「地産地消倶楽部」名義で花野果市に出荷しておりますが、それとは別に、10人ほどですが、自宅で収穫した野菜や果樹を個人名義で出荷している方もおられます。
石田:「地産地消倶楽部」はいつごろから始まったのですか?
上田:2008年です。
石田:JA女性組織としては先進的な取り組みですね。その提案をされたのは上田さんですか?
上田:女性部長をしておりましたので、そういうことになります。しかし、それは私だけの考えではございません。ちょうどそのころ、食の安全・安心とか、ポストハーベスト農薬の問題がクローズアップされるようになり、地産地消運動が全国的に広がっておりました。私たち女性部でも、食の安全安心を求めるというなかで、「自分たちの食べ物は自分たちでつくりたい」という思いが募りました。そんな思いから、JAとも相談いたしまして「地産地消倶楽部」を立ち上げ、ほ場もJAからお借りすることになりました。
石田:しばしば、JA女性組織は「メンバーが減っている」とか、「主体性が乏しい」とかいわれますが、この点について、上田さんはどのようにお考えでしょうか。
上田:JAこうか女性部では主体性を重視しております。現に、私たち「地産地消倶楽部」も主体性をもって活動しております。野菜畑については使用貸借でJAからお借りしていますが、それ以外は、種子代や肥料代を含めて、すべて自分たちでまかなっております。メンバーについても、多少の出入りはございましたが、発足時の30人をキープしております。
私自身は、メンバーは減ってもいいと思っております。たとえ減っても、地産地消に関心をもつ新しいメンバーに入っていただければ、それでいいのではないでしょうか。甲賀全体で人の入れ替わりなり、循環が起こることのほうが大切だと考えております。ですが、正直に申し上げますと、「畑を耕す」よりも「人を育てる」「仲間を育てる」ほうが大変です。
池村:本当に「心を耕す」のは大変です。
SDGsを意識した活動展開
石田:私はJAの活動、JA女性組織の活動というのは、そのすべてが「持続可能な開発目標(SDGs)」にのっとって行われていると考えていますが、この点についてはどうお考えでしょうか。
上田:私もそう思っております。世の中の流れにJAが遅れているということはございません。JAを含めて、協同組合全体がSDGsの原理で動いていると考えておりますので、JA女性組織がブレるということはございません。
SDGsが脚光を浴びる以前から、JAこうか女性部では「一人は万人のために、万人は一人のために」という思いで活動しておりますので、17の目標のうちのこの目標でやっています、というのではなくて、17の目標のすべてを意識しながら活動を進めております。例えば、私どもの「地産地消俱楽部」についていえば、畑を耕すこと、作物を育てること、産物を分けあうこと、直売所で売ること、料理をすること、食すること、そして健康であること、等々のなかで、17の目標のすべてを意識しながら活動しております。
池村:自らの意思を表明し、実際に行動するという点において、JAこうか女性部が大きく変わってきたのは、上田部長のリーダーシップによるところが大きいと考えています。
現在、JAこうか女性部には、「地産地消倶楽部」をはじめとして、全部で21の「倶楽部活動」があります。その倶楽部活動に加入するすべてのメンバーが、ご自身で活動費や材料費を払って参加しています。また、倶楽部活動の運営にあたっても、例えば会場の設営とか、終わってからの掃除とかを含めて、すべてをメンバー自身が行っています。
上田:倶楽部活動は「手段」であって、「目的」ではございません。しばしば倶楽部活動をしたいがために倶楽部に加入される方がみえますが、そのような方には、実際に活動していただくというなかで、女性部活動の本来的な趣旨をご理解いただけるように努めております。
ですから、男性料理教室のように、料理をつくる、料理を楽しむというだけではなくて、つくった料理を介護施設にお届けするといったことがたいへん重要になってまいります。また、私どもの「手話コーラス倶楽部」についていえば、習うことが目的ではなくて、習ったことを地域サロンや介護施設の方々にご披露し、喜んでいただくことが目的となっております。こうしたボランティア活動なり社会貢献的な活動に取り組むことによって、私どもの倶楽部活動に協同組合の本来的な価値が備わってくると考えております。
石田:すばらしい。まったく異論はありません。倶楽部活動にあっては「自分が楽しむ」「自分の役に立つ」というのは当然のことですが、それだけで終わったのでは協同組合の社会的価値は生まれてきません。「他者の役に立つ」、それも<身近な他者>ではなく、<見知らぬ他者>の役に立つということが重要です。協同組合がいう「一人は万人のために、万人は一人のために」という格言も、まさにそのことを言い表していると理解しなければなりません。
池村:21の倶楽部活動は、いまお話のあった「地産地消倶楽部」「手話コーラス倶楽部」をはじめとして、例えば「サンシャイン(ウオーキング)倶楽部」「フラワーアレンジメント倶楽部」「絵手紙倶楽部」「よさこい倶楽部」「ハイジpart2(ハイキング)倶楽部」「近江の文化財を学ぶ倶楽部」などがあって、非常にバラエティーに富んでいます。倶楽部活動への参加にあたっては、「会費」として1年1倶楽部につき300円をお支払いいただきますが、これは「倶楽部員傷害保険」に充当するためのものです。これとは別に、受講料や材料費などはすべて自己負担としています。
一方、倶楽部活動への参加の前提となる「女性部」への加入は無料です。ですから、女性部へ加入しても、倶楽部活動には参加しないという人からは「会費」は徴収していません。倶楽部活動への参加は任意です。
女性部へ加入すると、「食の学習会」「農の学習会」「健康教室」「仲間づくり活動・地区活動(講演・学習会)」「フレッシュミズ活動」などのSDGs活動と、「愛の米ひとにぎり運動」「環境問題への取り組み」「『家の光』愛用運動」などの助けあい活動に参加することができます。女性部では、こうした活動を「全体活動」と呼んでいます。
石田:いうならば、JAこうか女性部の活動は、全体活動と倶楽部活動の二段構えになっているわけですね。全体活動ではJA女性組織本来の活動である「SDGs活動」「助けあい活動」が行われ、倶楽部活動では部員のニーズに合った自主的な活動が行われる。非常にわかりやすく、すっきりした体系だと思います。全国のJA女性組織のモデルケースになるのではないでしょうか。
(終、取材/令和4年7月14日)
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