家の光文化賞JAトップフォーラム2022

家の光文化賞JAトップフォーラム2022

教育文化活動の役割を、いま改めて考える~メンバーシップを強化し協同の力を持続・発展させるために~

JAが組合員と地域にとってなくてはならない存在として、地域・組織・事業基盤を確立するには、組合員や次世代組合員との関係性の維持・強化が重要です。8月4日~5日に神奈川県横浜市で開催された「家の光文化賞JAトップフォーラム2022」では、協同組合への理解を深め、組合員・地域住民とのつながりを強化する教育文化活動の実践を通して、いかに「地域・組織・事業基盤の確立」をはかるかについて、先進JAの実践報告、パネルディスカッションを通じて相互研究を行いました。

家の光文化賞JAトップフォーラム2022

プログラム

1日目 8月4日(木)

1.開会あいさつ

一般社団法人 家の光協会 代表理事会長 栗原隆政
家の光文化賞農協懇話会 会長 山根盛治
来賓あいさつ
一般社団法人 全国農業協同組合中央会 代表理事会長 中家 徹

2.テーマ解題 

一般社団法人 日本協同組合連携機構 基礎研究部長 小林 元

3.実践報告①

鳥取県JA鳥取いなば 代表理事組合長 影井克博

4.実践報告②

福岡県JAみなみ筑後 代表理事組合長 吉田 昭

5.特別報告

立命館大学 経済学部 教授 増田佳昭

6.提案

一般社団法人 家の光協会 代表理事専務 河地尚之

7.懸賞論文 最優秀賞受賞者表彰・内容紹介

福岡県JA福岡市 冨永一郎

2日目 8月5日(金)

1.パネルディスカッション

コーディネーター 日本協同組合連携機構 基礎研究部長 小林 元
パネリスト    JA鳥取いなば 代表理事組合長 影井克博
         JAみなみ筑後 代表理事組合長 吉田 昭
         家の光協会 代表理事専務 河地尚之

2.まとめ講演

日本協同組合連携機構 基礎研究部長 小林 元

3.記念講演

獨協大学 経済学部 教授 森永卓郎

4.閉会あいさつ

家の光文化賞農協懇話会 副会長 白水清博

主催/家の光文化賞農協懇話会 一般社団法人 家の光協会
後援/一般社団法人 全国農業協同組合中央会

         

テーマ解題

教育文化活動の役割を、いま改めて考える~メンバーシップを強化し、協同の力を持続・発展させるために~
一般社団法人 日本協同組合連携機構 基礎研究部長 小林 元
一般社団法人 日本協同組合連携機構 基礎研究部長 小林 元
JAの基本理念を自分の言葉で

自分の言葉で、自分が働いている、参加しているJAの基本理念を小中学生に説明できますか。私は事業を通じて課題を解決し願いを叶える組織と説明しています。JAの事業は、地域の人々の困っていること、課題の解決からすべてが始まっています。協同組合は組合員が主人公の組織で、JA職員の役割は組合員の取組みをカバーすること。ところが事業がどんどん高度になりJA役職員という専門家が必要になって、だんだん便利になっていくと、組合員がお客様化してしまいました。

教育文化活動は、おしゃべりから始まり課題を共有し、『家の光』やJAだよりなどを教材に学んで解決し、事業につなげていく活動です。組合員がもう一度主人公になる契機をつくっていく教育文化活動は、常に取り組まなければならない活動です。

もう一度組合員が主人公のJAに

今、65歳以上の高齢者がJA事業・運営の中心になっています。しかし、10年後20年後のJA事業の中心を担う次の世代を、私たちはきちんと捉えられていないのではないでしょうか。これまで築いてきた組合員や地域の人々のJAに対する信頼感という〝暖簾〟を、大事にしなければなりません。地域のみなさんとJAが一緒に、地域が元気になる活動をすることは、10年後20年後のJAの暖簾につながっていきます。だから支店協同活動やJAまつり、支店だよりなどがたいせつなのです。

調査によると、准組合員の多くが直売所や農作業体験、『ちゃぐりん』、あぐりキッズスクールなどを通じて、JAに親しみを感じています。こうした人たちへの〝種まき〟が大事です。農業を離れてしまった高齢者などとの結び付きも大事です。もう一度組合員との関係を、しっかり捉え直す必要があります。

        

事例報告①

組合員、地域との「絆」 JAがこころのよりどころ~地域社会活性化と生きがいのある暮らしづくりを目指して~
鳥取県JA鳥取いなば 代表理事組合長 影井克博
鳥取県JA鳥取いなば 代表理事組合長 影井克博
ふれあい活動は総員外務体制で

JA鳥取いなばは平成7年に県東部14JAが合併し誕生、組合員3万2514人(うち正組合員1万253人)を擁しています。組合員・地域との絆を深め、「JAがこころのよりどころ」と言ってもらえるよう、地域の課題を解決するプラットフォーム機能の発揮をめざし、組合員・地域とのふれあい活動に総員外務体制で取組んでいます。高齢者の見守り活動も兼ね、職員が月に1度組合員宅を訪問し広報誌等を配布、移動販売車も運行し地域を支えています。今年度の取り組みのスローガンは『熟考』。組合員の声を聞き、想いを感じとり、提案し行動することに、十分に思いを致すよう心掛けています。

今年4月の総代会では、女性参画比率の向上へ理事・総代定数を改定し、それぞれ15%、10%以上の目標に向けた取組みを前進させました。女性管理職の登用も30%を達成し、35%を目指しています。

支店行動計画を軸に「家活」推進

支店行動計画の実践は、平成23年度から積極的に取組んでいます。自己改革と連動し、各支店が管内の課題と情勢を踏まえ、食農教育、地域貢献、地域交流の3本柱で年間約300余の計画を策定し、農業と地域の活性化を連動させた取組みを実践しています。毎年、支店ごとに活動報告を行い、優秀支店を表彰しています。

今年度からの「第8次地域農業振興計画」では、総合的な営農指導体制構築に向けて、「営農指導員強化プログラム」の実践とともに、「JA営農・経済事業の成長・効率化プログラム」で10項目のソリューションを策定し、農業者所得の向上と地域・JAの成長の両立をめざしています。

教育文化活動と家の光愛読者拡大に向けた「教育文化セミナー・愛読者拡大総決起大会」は、JA全体の取組みとして役職員が共有するため毎年開催しています。支店行動計画を軸に「家活(いえかつ)」を推進し、全支店で『家の光』ディスプレイコンテストを実施しています。コロナ禍でも積極的に『家の光』を活用し、家活グループを星の数ほど作ろうと登録を呼びかけ35グループとなりました。公民館88か所に『家の光』、51小学校に『ちゃぐりん』を無償配布、担い手には『地上』を配布し、コミュニケーションを図っています。

女性会は会員1482名で、本部活動と19支部活動、フレッシュミズ活動に分かれ、家活のほか各種活動を積極的に展開しています。支店行動計画と連動したミニデイサービスなどの福祉活動の輪も広がっています。平成25年に開講した女性大学「ルシール」は、累計143名が修了しましたが、昨年度はコロナ禍で開講中止になったことから、女性会と共催で人数・回数を限定した「プチ女性大学」を開催し、新たな仲間づくりを前進させています。

組合員・地域と各種取組みを通してつながり「絆」を深め、「JAがこころのよりどころ」となるよう、潤いのある地域づくりに向けさらに前へ進んでいきます。

実践報告②

持続可能な地域農業を目指して~教育文化活動の着実な実践~
福岡県JAみなみ筑後 代表理事組合長 吉田 昭
福岡県JAみなみ筑後 代表理事組合長 吉田 昭

JAみなみ筑後は、福岡県みやま市、大牟田市を管内とし、組合員は1万1699人、うち正組合員4726人で構成されています。今年度からの第7次地域農業振興計画では「持続可能な地域農業の取組み」をテーマに、農業者の所得増大、農業生産の拡大、地域の活性化を基本方針に掲げ、これに基づく中期経営計画で食料・農業・地域・JAの基盤確立・強化に取組んでいます。地域経営基盤の確立・強化に向けては、組合員の拡大とアクティブ・メンバーシップの確立へ、教育文化活動基本方針を策定し、自己改革を実践する人づくりと協同組合運動への理解促進に力を入れています。

全職員による毎月15日の正組合員全戸訪問活動「愛たい日」を実施しており、寄せられた意見や要望のなかから、職員が農作業の労働力を提供する「あぐり支援隊」など、様々な取組みが生まれています。

活動本部と事務局会を設置し横断的に

教育文化活動は基本方針に基づき、地域に根ざした協同組合としてのJAの役割を再確認するとともに、組合員・地域住民が安心して暮らせる豊かな地域社会を築くために、教育・学習、情報・広報、生活文化、組合員組織の育成の4活動を中心に実施しています。各事業部門が横断的に取組むため、教育文化活動本部と事務局会を設置し、役職員一体となった取組みを進めています。

支店ふれあい活動は、支店長が推薦するJA各組織や准組合員・地域住民の代表者10名程度で構成する委員会を組織して様々な活動を行っており、支店だよりを通じて組合員・地域住民に報告されています。農業まつりや食農教育、消防団活動、福祉施設への農産物贈呈、社会福祉協議会などへの寄付金贈呈など、地域貢献活動にも積極的に取り組んでいます。

令和3年には全総代定数を見直し、女性総代割合15%以上となるように設定。これまでの57名10.9%から86名17.2%となりました。3年度末で19.6%の女性正組合員割合の拡大へ、昨年9月から200名、約23%を目指した加入運動を実施しています。4年度末までの運動期間中に130名の加入を図り、2.1%増の21.7%をめざします。

女性部員から生活文化協力員を登録

女性部員は430名。半数は組合員で、57名がJAの総代です。福祉施設での『家の光』読み聞かせや、『家の光』記事をきっかけにしたフードドライブなど多様な活動を行っているほか、部員の中から現在14名が生活文化協力員として登録し、JAの活動を支援しています。

組合員の高齢化は、今後のJAの大きな課題です。教育文化活動基本方針の着実な実践により、組合員の協同組合運動への理解促進とJAとの関係強化を図り、「くらしに豊かさ、心にやすらぎ、地域に根ざしたJAみなみ筑後」の実現をめざします。

特別報告

「つながり」を強め、拡げるための教育文化活動の取り組み強化を~JAの教育文化活動が経営成果に及ぼす影響に関する調査研究報告~
立命館大学 経済学部教授 増田佳昭
立命館大学 経済学部教授 増田佳昭

家の光協会から依頼を受け、教育文化活動の実施状況等をアンケート調査し223JAから回答を得ました。コロナ禍で全てのJAで活動が非常に難しかったことがわかりました。多くのJAで「家の光誌購読者数の減少・伸び悩み」「女性部など組合員組織のメンバーの減少・活動停滞」「担当者と実施体制の弱さ」などを活動の悩みとして挙げています。また、教育文化活動は「組合員組織活性化への貢献」「JA、農業への理解促進、地域社会との連携」「職員と組合員との顔の見える関係」「事業利用への波及効果」などがあり重要だと答え、JAまつりなどのイベントはJAへの結集に大事な役割を果たしていると認識しています。

教育文化活動は組合員の結集やつながりに効果を持ち→事業利用につながり→JAの基盤強化につながる→それがさらに教育文化活動活性化の基盤になっていく。このプラスの循環は、今の組合員やメンバーの減少や活動の停滞が続いていくと、マイナスの循環となり経営の影響が出て来ることが想定されます。

つながりを「強める」「拡げる」

大事なのは「強める」こと。女性部や組織の活動をどう再活性化させるのか。小グループ活動など組織活動の見直しや、ニーズにそった学習・活動機会の提供、さらに組合員大学などでのリーダーの育成などが、テーマとして浮上しています。もう一つは「拡げる」視点。これまでつながりのなかった組合員や地域住民とのつながりづくりへの働きかけが必要です。正組合員や女性部等の次世代とのつながりづくりも大事な課題です。

教育文化活動は、女性、高齢者、子ども向け、一般向けの活動が高い割合で実施され拡大意向も強い一方、次世代や准組合員を対象にした活動は実施率が低く、拡大強化の必要性が意識されています。組合員向けの研修や講座などの活動もまだまだ弱く、強化の意向がうかがわれます。次世代、准組合員など「拡げる」部分での活動を重視していこうとする傾向がみられます。次世代・准組合員対象の活動はJAへの再結集効果が期待されています。『家の光』の購読者も准組合員が4分の1を占めると推計され、活動のなかでも准組合員は大きなウエイトを占めています。

活動を軸に「つながり志向」の経営を

現状と必要性のギャップを埋めることが、JAの教育文化活動の一番の課題です。そのためには、活動を推進する職場風土の醸成、教育文化活動の事業計画への位置づけ、などの必要が挙げられています。なかでも職員教育、リーダー教育の必要性が強く意識されています。今回ヒアリング調査を行ったJA福岡市では、組合員のリーダーが各種教室の講師役となり、そのための研修制度もつくっています。JAぎふでは、支店を拠点に協同組合人としての職員づくりに取り組んでいます。職員やリーダーづくりに新しい動きが出てきています。

教育文化活動の費用は、JAが仕事をしていく上で必要な経費と位置づけていく必要があります。JAはつながりのビジネスで成り立っています。教育文化活動を軸に「つながり志向」のJA経営をめざしていきましょう。

提案

メンバーシップ強化につなげる教育文化活動・家の光事業の積極的展開
一般社団法人 家の光協会 代表理事専務 河地尚之
一般社団法人 家の光協会 代表理事専務 河地尚之

第29回JA全国大会決議では、協同組合らしい人づくりに向けて組合員教育、職員教育の重要性が強調され、教育文化活動が明確に位置づけられました。

教育文化活動の4つの活動領域について私は、①教育・学習活動=「学ぶ活動」、②情報・広報活動=「伝える活動」、③生活文化活動=「楽しむ活動」、④組合員組織の育成活動=「育てる活動」と言い換えられるのではないかと考えています。さらに、組合員同士や、組合員とJAの役職員が関わり合いながらという意味で、「学び合う活動」「伝え合う活動」「楽しみ合う活動」「育て合う活動」と捉えることも、組合員との関係づくり、職員力・組合員力のアップにつながるのではないかと思います。

JAの事業計画に位置づけを

協会として行っている様々な活動支援の中でも現在、家の光記事活用を行う「家活(いえかつ)グループ」の育成に力を入れています。組合員大学や女性大学、JA家の光大会、クッキング・フェスタ、ちゃぐりんフェスタ、あぐりスクールなど、組合員やその家族がJAに集う様々なイベント、組合員の家計防衛と人生設計をお手伝いする「未来を描く ハッピー マイライフ運動」なども引き続き支援していきます。

JA向けの情報発信媒体である『JA教育文化・家の光ニュース』は、5月から新たに『JA教育文化Web』としてウェブ発信しています。各種事例のデータベースも公開しています。

ぜひ、JAの事業計画への家の光事業、教育文化活動の位置づけをお願いいたします。そして、地域に輝くJA、他の範となるJAとして家の光文化賞をめざして取り組んでいただきたいと思います。

懸賞論文・最優秀賞

協同の魅力を基とした、これからのJA発展への提言~教育文化活動の本質を解く~
福岡県JA福岡市 常務理事  冨永 一郎
福岡県JA福岡市 常務理事  冨永 一郎

令和2~3年度は、コロナ禍で様々な教育文化活動、支店協同活動が中止になりましたが、みそづくり教室や学童稲作、しめ縄作り、リモート学童稲作などを頑張って開催しました。「はようコロナ終わってまた元通りの活動がしたかね」との参加者の声が、困難な状況の中でも収穫でした。やはりこうした活動が必要だ、と思いを新たにしたところです。

高い次元で満足感が得られる仕組みを

組織運営や教育文化活動の何が人の心に訴えるのか。心理学者マズロー氏は、人間は生理的欲求や安全の欲求の上に、社会的欲求や承認欲求、自己実現欲求の5つの欲求があると言います。組織活動、教育文化活動の仲間づくりや楽しみは、社会的欲求の範疇。これをもう少し発展させた、人や自分のためになる活動は、組織活動の目的の設定がポイントです。清掃や草刈りなどの地域保全活動、農産物の収穫祭、食農教育など、楽しんで交流を深めつつ、活動目的を通じて高い次元の満足感を得られる仕掛けづくりが大事だと思います。

職員もしだいに、組織運営や教育文化活動に主体的に関わるモチベーションが生まれます。その方が結局、事業推進にも結び付くとの認識が一般的になっています。

各種の事業活動から収益が得られ、農業振興をはじめ生活支援、食農教育活動や環境保全活動、支店協同活動などに投下することで、また事業が成り立っていきます。協同組合として、この循環型総合事業を展開すれば、必ず組合員は応えてくれJAは発展します。真に人の心を動かすのは人の心。職員一人ひとりが組合員のために何ができるかを考えていけば、必ず組合員がJAを動かしてくれると信じています。

パネルディスカッション

教育文化活動の役割を、いま改めて考える~メンバーシップを強化し、協同の力を持続・発展させるために~
コーディネーター
日本協同組合連携機構 基礎研究部長 小林 元
パネリスト
JA鳥取いなば 代表理事組合長 影井克博
JAみなみ筑後 代表理事組合長 吉田 昭
家の光協会 代表理事専務 河地尚之
パネルディスカッション
コロナ禍の中での活動

小林 テーマ1として、コロナ禍の中、顔の見える関係づくりをどう進めたかを2JAにお聞きしたいと思います。

影井 活動はできる限り、人数制限や感染防止対策などを行いながら取り組んでいます。毎月の組合員訪問活動も気を遣いながら継続しています。家活も多くの取り組みが中止や変更を余儀なくされる中、JA内のイントラネットを活用した情報共有を強化したいと考えています。

吉田 当JAも同様です。認定農業者・部会役員等の対話運動において困難な時は、支店を会場に感染防止対策を徹底しながら対話活動を行っています。JA総代会や部会総会も昨年は書面開催となり、用紙には意見・要望の記入欄を設けました。

小林 家の光協会の活動支援については。

河地 家の光記事活用を女性部活動に役立てるアイデアを募る「家活グランプリ」も今年で6回目。今回の応募作品からも、コロナ禍で活動に苦労されていることがよくうかがわれました。入選作品は家の光協会のウェブサイトで公開していますのでぜひご覧ください。

コロナ禍の中、気軽にできる「10分家活」の提案や、記事に関する動画配信、記事活用グループの結成促進を進めています。家の光クッキング・フェスタのオンライン開催も提案しています。

組合員とのつながりは深まっているか

小林 テーマ2。教育文化活動によって、組合員とのつながり、特に次世代や准組合員とのつながりは深まりましたか。

影井 特に保育園や小学校での農業体験は、先生や児童・保護者、地域住民に喜んでいただいています。アンケートの反応も良く効果はあがっているようです。

当JAでは令和3年2月、准組合員にかかる意思反映・運営参画促進要領を制定しました。准組合員の参画を進めるにはまず、情報をいかに届けるかです。

吉田 対話活動などを通して、少しずつつながってきていると感じます。支店ふれあい委員会には地域のまちづくり協議会の役員なども入っていただいています。

当JAは准組合員比率が非常に高く、今後も高まる見込みです。女性部や年金友の会などに加入されている方は常時活動がありますが、それ以外の方を意識し、准組合員向けにJAをPRする広報誌を今年から配布しています。特に准組合員の利用、運営参画を強化していきたい考えです。

組合員とのつながりは深まっているか
  
つながり強化と家の光事業

小林 テーマ3。組合員とのつながりをどのように強めたいとお考えですか。またその際、家の光事業に期待されることは。

影井 JAは組合員や地域と各事業を通じてつながることが重要です。総合事業の強みを活かして横串を通し、組合員・地域の方々に「JAがこころのよりどころ」と言っていただけるように実践していきます。女性の元気が地域の活力。女性会とのつながりも深めます。家活活性化に向けコンテストを行う計画もあります。

吉田 次世代を担う若者の人づくりを重視し、本年度から組合員大学設立に取り組みます。家の光協会を通じて講師の先生方をお願いしたいですし、アドバイスもいただきたいです。家の光協会の学習資材も活用していきます。准組合員とのつながり強化も積極的に取り組んでいきます。

小林 家の光協会の取り組みについては。

河地 家の光事業の要の一つは、雑誌や図書、ウェブサイトなどを通じた情報発信です。『家の光』記事は、JA役職員の皆さんが教育文化活動を進めるにあたって有用な記事という視点も必要ではないかと思っています。

これまでも教育文化活動の理論構築のため、学識経験者やJAトップの皆さんにご協力いただき調査研究を行ってきました。今後も全国のJAの優良事例の収集・紹介、データベース化も進めていきます。会議・研修会もさらに充実していきます。

『家の光』は2025年5月号で創刊100周年を迎えます。これを機により多くの方に読んでいただけるよう誌面刷新を進めていきます。

家活についてはJA役職員の皆さんに、組合員との学び合いや対話力アップに向け、ぜひ積極的に進めていただきたいと思います。

小林 家の光文化賞の審査委員長を務められた白石先生、審査委員を務められた村田先生からもコメントをお願いします。

つながり強化と家の光事業

白石正彦・東京農業大学名誉教授 2JAで共通している点は、組合員・役職員が一体的に取り組まれている点。JAの組織風土もそのように改革する時代に入ったのだなと感じます。

JA鳥取いなばの移動販売車は、生活店舗を起点にしてつながっています。活動が持続しふれあいを育むには、事業としての体制がきちっとできているかがポイントという視点も大事でしょう。

JAみなみ筑後の、手を挙げた職員に活動してもらう組織風土も、自発的に活動するという新しい段階にきていると感じます。

こうした活動の情報を発信する家の光協会も、一部をウェブサイトで発信するなど大きく変わってきています。

つながり強化と家の光事業

村田武・九州大学名誉教授 教育文化活動が新しい時代を迎えていると感じます。いまJA女性部・女性会には、非農家の准組合員や地域のリーダー的な女性が多くいます。JA女性部・女性会が、地域そのものの暮らしを支える先頭に立っているのです。その中で教育文化活動に対する地域からの期待は、ますます大きくなっていくでしょう。JA直売所での活動が地域住民の食を支える役割を担っている様子などからは、教育文化活動から教育文化生活事業へという方向性もうかがえます。

小林 最後にお3方から一言ずつ。

影井 2日間、貴重な体験をさせていただきました。今後も教育文化セミナー、愛読者拡大運動など全力を挙げて取り組んでいきたいと思います。

吉田 家の光文化賞という名誉ある賞をいただいたおかげで、大変貴重な体験をさせていただきました。私自身、大変勉強になりました。これを契機に今後とも教育文化活動の実践強化に取り組んでいきます。

河地 現場の生の声をお聞きし、改めて教育文化活動の重要性や、今日的な教育文化活動をいかに提案していくかを考えることができました。多様な組合員とどうつながっていくかが一番の課題でしょう。増田先生が言われた、コアな組合員にはより「強める」、マスの組合員にはより「拡げる」。そのためのメニューをどれだけ用意できるかが課題だと思いますので、協会としましても、全国のJAの事例を発掘し、先生方からの意見を参考にしながら、今日的な教育文化活動のあり方を探っていきたいと思います。

小林 ありがとうございました。

まとめ講演

一般社団法人 日本協同組合連携機構 基礎研究部長 小林 元
まとめ講演

各報告から得られた学びを私なりに整理します。

JA鳥取いなばではまず、JAトップのリーダーシップについて。トップが自分の言葉で教育文化活動、つながりづくりについて語ることができている点が大きいと思います。また、組合員目線が、事業面でも活動面でも強く意識されています。家の光文化賞審査委員の石田正昭先生(京都大学学術情報メディアセンター研究員)はこれを「組合員目線のマーケットイン」と表現されました。そして、女性が活躍していることが大きなポイントです。他事業と同様に家の光事業でもPDCAがしっかり回っていることも特長だと思います。

JAみなみ筑後も、JAトップのリーダーシップの高さが共通しています。明るくしっかりした職場をつくっていること、そして何よりも、教育文化活動基本方針を策定していることが重要です。皆さんも、いまは亡き坂野百合勝先生が家の光協会から出された『地域に輝くJAをめざして JA教育文化活動のすすめ』をもう一度ぜひ、手に取ってみてください。

特別報告で増田先生は、女性、准組合員、次世代のつながりを「強める」「拡げる」ことが重要だと話されました。この2つの運動の方向性が、これからの教育文化活動、そしてJAを元気にするために大切になるのではないかと思います。

参加者の皆さんには事前アンケートをお願いしました。寄せられた声が多かったのは、①対話運動、訪問活動のたいせつさ、②支店を核とした、関係づくり、③全国に拡がる次世代リーダー育成、④関係を築く職員育成(人づくり)です。これらが、今後の教育文化活動、組合員とのつながりづくり、職場づくり、さらに言えばJAづくりのために必要なことなのだと思います。

結びにかえて

ぜひ、JAトップの皆さんが、自分の言葉で語ってください。私が常日頃お世話になっているJAトップの方々に共通しているのはこの点です。そして、対話運動から組織活動へ、特にコアな組合員の方々についてはより関係性を「強める」。次世代づくりに向けては「拡げる」。このことが重要になると思います。

教育文化活動は、単に活動するのが目的ではなく、JAの基盤づくり、人づくりにつながるものです。増田先生も言われたように事業・経営の「根っこ」なのです。

ぜひこうしたことを皆さんと共有し、教育文化活動をより活発にし、次世代に豊かな地域と地域農業をつないでいくために、白石先生の言葉を借りれば「新しいJAのあり方」を追求していきたいと思いますし、それに向けて家の光協会には今後さらに、JAの皆さんの取り組みを支援し引っ張っていただきたいと思います。

結びにかえて
会場の外では、世界こども図画コンテスト(家の光協会主催)で過去に入賞したウクライナの子どもたちが描いた絵が展示された。休憩中に足を止める人も

公開日:2022/09/01 記事ジャンル: 配信月: タグ: / / /

この記事をシェアする

twitter
facebook
line
ページトップへ