【提言】できることを共有して地域の防災力アップ!今泉マユ子 管理栄養士・防災士・災害食専門員

今泉マユ子 管理栄養士・防災士・災害食専門員

今泉マユ子

いまいずみ・まゆこ/管理栄養士として大手企業社員食堂、病院、保育園に長年勤務。食育、災害食に力を注ぎ、2014年に管理栄養士の会社を起業。レシピ開発を行い、防災食アドバイザーとして全国で400以上の講演実績がある。著書は『SDGsクッキング』『もしもごはん』『防災教室』シリーズなど多数。レトルトの女王、缶詰の達人とも呼ばれ、テレビやラジオ、新聞、雑誌、WEBサイトなどでも活躍中。

地域の防災力をどのように高めていくか。その第一歩として、ふだんの生活で楽しみながら「防災ごっこ」を取り入れることを提案する。一人一人の体験をとおして、「できること」と「できないこと」を共有することができ、地域防災に生かすことが重要だと語る。

十分な備えがあってこそ、支援ができる

私は、JAグループの家庭雑誌『家の光』の2017年3月号「いますぐ備えよう 防災のアイデア30」、2019年2月号「たっぷり食べて、めざせ健康! サバ缶生活」、2019年9月号「お母ちゃんのすごい防災術」、2020年9月号別冊付録「もしも…に備える 災害食レシピ」の記事の制作に携わりました。さらに、全国のJAで防災と災害食の講演を行っています。講演では電気ポットをお借りしてデモ調理を行い、「お湯ポチャレシピ®」と「即食レシピ®」を紹介しています。新型コロナウイルスの影響で従来の防災訓練が中止になるケースが多い中、自主的に防災食の勉強会を開催したり、『家の光』を活用して「お湯ポチャレシピを練習しました」などと聞いたりすることも多く、防災意識が高いことを嬉しく思っています。

防災は近隣住民みんなで助け合い、地域全体で乗り越えることが大切です。ですが、その前に「一番大事なのは自分と家族の命と健康を守る」ということを忘れないでください。「自分は大丈夫」と言えなければ、人を助けることはできません。

私は日本栄養士会災害支援チーム(JDA-DAT)のリーダーをしています。被災地支援の要請がきたとき、家族の安否確認、家の安全が確保でき、「備え」がちゃんとできていなければ、被災地支援に行くことはできません。「大丈夫」と言えるように、家を安全な場所にして、水や食料、カセットコンロ、灯り、携帯トイレ、衛生用品を必ず備えましょう。

心身ともに健康でいるためには不安を取り除くことも重要で、情報収集をするためのツールも必要になります。災害が起きてライフラインがすべてストップした家は、テントと同じです。備えがなければ生活はままならないです。不便な場所にキャンプに行くときは手ぶらでは行かないですよね? 十分な備えがあると安心につながります。そして人のために使うこともできるのです。

ふだんの生活の中で「防災ごっこ」をする

ご自宅で防災訓練をしたことはありますか? 保育園、学校、職場、地域では防災訓練を行うのに、なぜ家ではやらないのでしょう? 防災訓練はとても大事です。ふだんやっていないことは、災害時にはできません。ご家族で、一人暮らしの人も、おうち防災訓練、在宅避難訓練をしましょう。

訓練となると身構えてしまうので、「防災ごっこ」として、ふだんの生活の中で取り入れてみてください。楽しみながら日常=防災に。日常で当たり前にしていたことが、防災に役立つことが理想です。まずは「停電ごっこ」と「断水ごっこ」をやってみましょう。停電、断水を想定して、食事を作るときは備蓄している水だけで作り、カセットコンロ、ボンベを使い、懐中電灯の灯りで食べてみる、といった体験をしてみてください。いろいろなことに気づくことができると思います。

そしてできることを増やしましょう。お湯ポチャレシピをお伝えすると、「それ知ってる!」「聞いたことがある」と言われることがありますが、それは「できる」とは違います。知っていると自分もできるような気になってしまいますが、やってみると案外難しかったりします。

実際にやってみて「できること」と「できないこと」を知ることがとても大事です。「できないこと」が分かれば、自分は何を備えればいいのか、どう補えばいいのか、人の力を借りるべきなのか、など次のステップに進むことができます。体験することがとても大事です。

自分が体験したあとは、次はみなさまから地域にお伝えして、防災ごっこの輪を広げてください。各自十分な備えがあり、体験して「できること」と「できないこと」を確認して、それを地域で共有することが、地域の防災力アップにつながります。みんなで防災力アップを目指しましょう!

「防災ごっこ」をふだんの生活に取り入れてみませんか。お湯ポチャレシピは、ポリ袋を使った調理法で1つの鍋でいくつかの料理を同時に作ることができる
「防災ごっこ」をふだんの生活に取り入れてみませんか。お湯ポチャレシピは、ポリ袋を使った調理法で1つの鍋でいくつかの料理を同時に作ることができます

公開日:2022/09/01 記事ジャンル: 配信月: タグ: /

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