【提言】いまこそ出番! 対面コミュニケーション増田佳昭 立命館大学 経済学部教授

増田佳昭 立命館大学 経済学部教授

増田佳昭

ますだ・よしあき/1952年生まれ。京都大学大学院農学研究科博士課程修了、農学博士。滋賀県立短期大学助手、助教授を経て、2007年滋賀県立大学環境科学部教授、2018年より現職。専門分野は農業経済学。農協の制度や経営、農村における協同組織のあり方について幅広く研究している。

コロナ禍によって、JAの組織活動をはじめ、対面で話し合う機会が大きく減った。しかし、人と人が顔を合わせたコミュニケーションは、わたしたちの暮らしに欠かせない。仲間と共感し合いながら展開する、JA教育文化活動によって、つながりを築くことが求められている。

“コミュニケーションに飢えている”

先日、元JA職員で、果樹農家として頑張っておられるAさんから、久しぶりにメールをいただいた。Aさん曰く、このところJAでは、「コロナ禍のことですので……」と、会議、研修、イベント等をJA自らが制限、生産部会や女性部、青年部など組合員の集まりもほぼ皆無。本来、JAの強みはコミュニケーションしかないはずなのに、コロナ禍を「水戸黄門のご印籠」にして、この3年近くJAは組織活動を軽視してきたのではないか、知恵と努力で本来の活動を取り戻さないと、JAは組合員に見放されますよ、とのことである。

コロナ禍の下でのJAの組織活動への苦言である。たしかに、感染拡大防止のために通常通りの会議やイベントに取り組めなかったのは、やむを得ないことである。しかし、「コロナ禍」が組合員活動や会議開催を「手抜き」する口実にされたとすれば、JAの強みを失い、みずからその基盤を掘り崩すことになるだろう。工夫と努力をしながら、コミュニケーションを取り戻すことは、JAにとって当面する焦眉の課題だと思う。

Aさんのメールは、「農家は青空の下、元気に作業をしています。しかしコミュニケーションに飢えています」と締めくくられていた。

わたしたちの暮らしを元気にするために

さて、コミュニケーションは、人間にとって根源的に重要なことのようである。先日の朝日新聞の記事でも、長引くコロナ禍の下で小中学生の自殺者が2020年に過去最多、21年も過去2番目に多かったという。子どもたちは、勉強や人間関係など日々の悩み、自分の気持ちを誰かに話すことでストレスを発散し、解決策を見つけている。ところが、コロナ禍で休み時間や給食の際の雑談など、一見無駄に見えていた時間がなくなったことで、日々の出来事をうまく咀嚼できずにストレスを抱え込んでしまうというのである。

対面コミュニケーションの必要は、子どもたちに限ったことではない。大人でも同じである。抱えている悩みや興味、関心を話し、聴いて、「そんな考えもあるんだ」と驚き、「ああ、あなたもそうでしたか」と安心し、「次にこんなことをやれたら楽しいね」と共感し合う。そんな会話から始まるこころの動きは、人間が生きていく上で不可欠なものである。私たちの暮らしを元気にするそんな機会をなくしてはいけないし、むしろ積極的に創造しなければならないのではないか。

JAの教育文化活動も、リアルな対面コミュニケーションの場として、いまこそ出番だと思う。

公開日:2022/07/01 記事ジャンル: 配信月: タグ: / / /

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