【提言】JA教育文化活動が地域共生の未来づくりを担う村田 武 九州大学名誉教授
村田 武 九州大学名誉教授
むらた・たけし/1942年福岡県生まれ。京都大学経済学部卒、京都大学大学院経済学研究科博士課程中退。大阪外国語大学(ドイツ語学科)助教授、金沢大学経済学部教授、九州大学農学部教授、九州大学大学院農学研究院教授、愛媛大学農学部教授を経て、2008年4月より現職。博士(経済学)、専門は農業政策。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、JA女性部活動にも制限が及ぶなかで、明らかになってきていることがあります。人と人とのつながりの重要性――。地域で再生し、広げていくためには、JA教育文化活動と生活事業の充実がカギを握るといえます。
活動して達成感を味わいたい
昨年の秋に、福岡県のあるJA女性部長さんに、「コロナ禍で何がいちばんたいへんですか」とお聞きした。その答えは、「何よりも女性部の会合やイベント開催が中止に追い込まれ、部員が顔と顔を合わせることができないこと、そして支部長さんなど女性部リーダーが、活動できないことで達成感を味わうことができないことです」であった。私は、なるほどそういうことかと感じ入ったしだいである。
私は、第63回全国家の光大会の2月14日開催「都道府県代表体験発表大会・中日本地区」と、3月7日開催「全国家の光大会体験発表」の審査委員長であった。その審査講評で冒頭に述べたのは以下のことであった。
「第63回全国家の光大会の体験発表に参加された都道府県代表55名の皆さんに、コロナ禍のなかでのご苦労に心より敬意を表します。コロナ禍がJAの今後について示唆しているのは、教育文化活動と生活事業という共助の重要性がいっそう明らかになっていることです。JAの地域でのインフラとしての実質化は、JAが地域共生の未来づくりを担うということです。皆さんの体験発表は、いずれも共助=「人と人とのつながり」をめざす心意気を示すものでした。全国家の光大会・記事活用の部の発表者6名のうち半数は、非農家・准組合員のみなさんです。教育文化活動は農家組合員の枠を超えて、地域に広がっているのですね」
人と人をつなぐ教育文化活動
私が言いたかったのは、「コロナ禍が総合農協の今後について示唆しているのは何か」である。20世紀の「社会主義」はソビエト連邦をはじめ「国民監視社会=人と人のつながりを断ち切り、協同組合運動など共助を破壊して公助だけを肥大化させた社会」であった。「地域共生の未来」とは、自助・共助・公助のトライアングルを、公助を肥大化させたいびつな三角形から、それらのバランスのとれた正三角形にすることであろう。すなわち、総合農協にとって、教育文化活動と生活事業の重要性がいっそう明らかになっていること、農村地域の生活インフラとしての実質化は、人と人とのつながりを再生する教育文化活動なくしては実現できないということである。人と人とが分断されている都市地域では、なおのこと消費生協や医療生協などとの連携をJAがリードし、共助を組織していくことが期待されている。
公開日:2022/06/01 記事ジャンル:提言 配信月:2022年6月配信 タグ:役職員学習 / 教育文化活動の体制整備