【協同の歴史の瞬間】
賀川豊彦の「乳と蜜の流るゝ郷」(その14)
1935(昭和10)年4月号 東助と鈴子の大塩村での生活が始まり、順調に滑り出す
1935(昭和10)年5月号 「産業組合結婚」式が挙行される
監修/堀越芳昭 山梨学院大学 元教授
上田から大塩村に戻る東助の気掛かりは、母と鈴子の折り合いの問題であった。しかし、二人で戻ったその日に二人は打ち解けあい、東助は安堵する。鈴子は処女会のメンバーのみならず地域の人々、とりわけ小作人から評価されていく。
そういうなかで、巡査の佐藤敬一が「産業組合結婚」をこの大塩村で挙げたらどうかと東助に打診する。東助も佐藤巡査の提案に賛同する。
式当日は、夜八時から始まるというのに七時には式場の講堂には空席が一つもない、という盛況ぶりであった。産業組合青年連盟、青年団、処女会の会員が二列に並ぶなか、花嫁、花婿が入場して、結婚式が始まる。
「三々九度の杯」では、甘酒が用意されるが、大塩村禁酒同盟会を立ち上げた東助にとっては、当然のことであった。式は無事終了するが、処女会を代表して祝辞を述べる予定であった田中高子が書置きして、どこかに行ってしまい大騒ぎになるというハプニングがあった。
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