【開催報告】令和4年度全国JA家の光食農教育リーダー研修会

タイトル

「すぐに使える! 食農教育の実践手法を学ぶ ~子どもたちの生きる力を育むために~」をテーマに、食農教育リーダー研修会をオンライン配信(期間1月6日~31日)しました。全国から81JA・団体が参加し、JA食農教育担当者を中心に約300名が視聴参加しました。4つのプログラムの内容を紹介します。

主催/一般社団法人 家の光協会
後援/一般社団法人 全国農業協同組合中央会

写真A-2 入る

基調講演

学びとつながりを広げる〝食べものがたり〟
法政大学 教授 湯澤規子 氏

農村社会学が専門の私は、近所の子ども食堂で仲間たちと、食農教育につながる新聞作りやワークショップ(WS)を行っています。今回は10のWSを紹介します。

WS①は「あなたにとって胃袋とは何ですか」。書いた答えを「社会」「私」に区分した紙に貼ってもらうと「私」が多く、食を自分だけのことと考える人が多いことがわかります。

WS②は「あなたは食べものから何を得ていますか」。縦軸を「私」「社会」、横軸を「物質・栄養」「文化」に分けた紙に答えを貼ると、いろいろな考えがあることがわかります。

写真A-2 入る
「食べものから得るもの」を考えるワークショップ

WS③は「好きな食べものを紹介してください」。紙皿に書いて見せ合うと、いろいろな物語があることに気づきます。

WS④は「レシピを提供する」。手作り新聞で紹介したレシピを自ら作ったり、レシピを考えたりと、自分からのアクセスが起こります。

WS⑤は「食べものが生まれる場所を歩く」。WS⑥は「どこどこマップを作ろう!」です。一つ書いてもらった食べものが、どこから来てどこへ行くのか矢印で追うと、疑問がわき自分ごととして考え始めます。

そこでWS⑦「食や農の現場に話を聞きに行きたいね!」。さらにWS⑧「地域の食べものがたりを集めて分かち合う」で、食と農と人をつなぐ物語を大事に思うようになり、WS⑨「作って食べてみよう!」で生産者との現場体験につなげます。

そしてWS⑩「未来の一皿を考えよう! ~子どもたちの生きる力を育むために~」。一皿を作るために必要な食や農のあり方を考えます。

食農教育は子どもたちの生きる力を引き出します。子どもの食体験と、JAの皆さんが持つノウハウや経験、物語を接続させることができれば可能性は広がるでしょう。

写真A-2 入る

実践・提案①

子どもたちをワクワクさせる食農教育
ファーム・インさぎ山 萩原さとみ 氏

作っていた植木がバブル崩壊で売れなくなった頃、グリーンツーリズムという言葉に出合いヨーロッパを視察した際、巨匠アンリ・グロロー氏に「そばにいる消費者に向けて発信しなさい。そして地方の発信基地にもなるんだよ」との言葉をいただき今日の私があります。

1997年、小学校の「生活科」の実地版をと自分でカリキュラムを作り活動を開始。小学生がいる家族連れなどに田畑を貸し、畑体験、田んぼ体験、農村生活体験の3本柱で月1回教えていくことにしました。

場所はさいたま市の西部「見沼田んぼ」で、1984年まで特別天然記念物だった「野田のさぎ山」に位置しています。学校・企業などを受け入れている他、2年前には年間を通して農体験を行う食育コース、田んぼの学習コースを設けました。

写真B-2 入る
子どもたちが安全に稲刈りをする方法を解説

プログラムは、生きた知恵や知識を伝えるため多くの体験ができるよう工夫していますが、詰め込みすぎないように注意し、子どもの自由な発想を育めるよう余白を設けるようにしています。好奇心を引き出すクイズも出します。

また、地域資源を活かし、地域の歴史、自然、産業、人を知ってもらうようにしています。野田のさぎ山はなぜなくなったか、見沼田んぼはダムの役割も果たしているなど、環境についての話もします。

私たちにとっては当たり前の農園は、街の人の非日常。街の人にとっては自然に触れ合う機会が何よりの魅力です。街の人に農業の応援団になってほしいとの思いで、今後も食農教育で都市と農村の交流を続けていきます。

(写真C 入る)

実践・提案②

子どもの〝作ってみたい〟を引き出す料理体験
料理家・管理栄養士 新谷友里江 氏

食生活の乱れから集中力が落ち学力低下につながる恐れもあると言われます。幼少期から食育がきちんと行われることで、大人になっても正しい食の知識や習慣を持ち続けることができるのだと思います。食に興味を持ってもらい料理の楽しさ大変さを伝えることで、生産者や料理を作る人への感謝の気持ちも芽生えるでしょう。

子どもに食べ物や料理への興味を持たせるにはまず、大人が食に興味を持って子どもと関わること。親子の会話も増え料理や食事が楽しい体験になります。子どもが食べない料理や食材も、大人がおいしいと言って食べることで、いずれ興味を持つかもしれません。

(写真C-2 入る)
卵を溶いたり、焼いたりする工程があるオープンオムレツは子どもにお勧めの料理

料理器具は子どもにとって魅力的。使ってみたいという気持ちをうまく利用し、料理に興味を持たせるのも一方法です。まず野菜を切るなどの簡単な作業から。慣れてきたら餃子作りやフライパンを使う作業も取り入れていくと楽しいでしょう。野菜を一緒に育てることも素晴らしい体験です。

包丁や火を使う時は、使い方や危険なことについて丁寧に教えてから始めます。口や手を出しすぎてしまうと、せっかくの子どものやる気を削いでしまうので、危険がないよう最低限の注意をしつつ見守ることがたいせつです。一人で作れたという小さな成功体験を積み重ねることで自信が生まれ、自己肯定感を高めることにもつながります。

食育で便利なツールが、農水省制作の「食育ピクトグラム※」。食への関心を高めることにつながります。

※「食育ピクトグラム」(農林水産省ウエブサイト)の内容はこちらから

(写真D 入る)

実践報告

リモートで伝える小学校への出前授業
JA東京むさし 国分寺地区青壮年部 部長 田倉輝久 氏

リモート出前授業は、教室と圃場をオンラインでつなぎ、圃場や農業の説明を行います。当青壮年部では令和3年度から始め、それまでの出前授業から実施校が4校も増えました。

小学3・4年生が対象で、部員2、3名とJA事務局1名で対応。地元・国分寺の農業について、農地面積の都内での割合、市内の農地面積、農家件数などを話す際、1haはわかりやすいように校庭4つ分と換算。市内農地が校庭572個分と説明すると子どもたちは驚き歓声をあげます。

次に、地産地消の良いところを、①旬の野菜を食べることができる、②新鮮な野菜や果物を買うことができる、③生産者の〝顔〟が見えるから安全・安心、④環境にやさしい、に絞り説明します。

そして圃場にいる青壮年部員をオンラインでつなぎ、圃場や農機具、作業の説明をしながら、悩みなど現場の声を伝えます。

(写真D-2 入る)
耕うん機を使って、ネギの土寄せ作業を見せることも行っている

興味を引かせ飽きさせないため、次の3つのことを心がけています。

①野菜のクイズを用意し子どもたちに考えさせる。答えが出ない場合にはヒントも交える。

②農機具を見せたり野菜を収穫したりと実際の農家の様々な動きを見せる。

③例えば「ポインセチアは年間5000鉢を生産」など具体的な数字を出す。すると驚いたり声があがったりします。

ここ3年間は新型コロナの影響により、青壮年部としてはあまり活動できませんでしたが、オンライン中継などを取り入れ、時代に合わせた食農教育を実践していきたいと思います。

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