【教育文化・家の光プランナー】次代の女性部リーダー育成をめざして影山広美 JAとぴあ浜松 生活部生活指導課 課長

影山広美 JAとぴあ浜松 生活部生活指導課 課長

影山広美 JAとぴあ浜松 生活部生活指導課 課長の写真

かげやま・ひろみ/1987年、合併前の「浜松市中央農協」に入組。以降、8年間支店の信用窓口業務に従事。1995年4月「JAとぴあ浜松」誕生後、5年間、本店の金融部推進企画課で窓口指導を担当する。その後、支店で共済LAとして5年間務めたのち、再び本店の金融部推進企画課で窓口・年金の指導。2015年、生活部生活指導課へ異動。女性部事務局の地区担当として3年、本店担当として2年を経て、現在に至る。

JAとぴあ浜松のフレッシュミズグループ「ハイビスカス‘15(いちご)」が考案した「フレッシュセルリー餃子と彩りナムル」が、2022年「第20回 ザ・地産地消 家の光料理コンテスト」で優秀賞に選ばれました。コンテスト応募の経緯や、若い世代が積極的に活動している女性組織の仕組みづくりについて、女性部事務局の影山広美課長に聞きました。

JA職員として「伝える」ことの大切さを学ぶ

――入組後をはじめ、信用共済部門に長く従事されてきました。

窓口業務を経て、窓口の担当者を指導する立場になりましたが、自分にとってたいへん勉強になる経験でした。指導するということは、伝えることをまず自分が正しく理解し、どのように話せば伝わるかを常に考え、伝え方を工夫しなくてはなりません。8年間の支店窓口経験をたよりに奮闘したことで、自分の中での考えや信念がまとまり、相手に伝わる指導ができるようになっていくのを感じました。また、5年間のLA業務では、競合他社も多くあるなか、「農協です」と言うと、必ず話を聞いてくれることに驚き、ありがたく感じました。農協の意味合いや地域に占める影響力の大きさを実感する、貴重な経験ができたと感じます。こうした多くの業務経験は、今の女性部員や組合員と密接にかかわる生活指導業務にも生かされていると感じます。

柔軟なフレッシュミズ活動の秘訣と工夫

――若い世代がJAの活動に積極的に参加しているようですね。なかでもフレッシュミズグループ「ハイビスカス‘15」の活動が活発です。どのように結成されたのですか?

JAとぴあ浜松は、いわゆる「女性大学」の取り組みを、管内在住の39歳以下の女性に限定し「エッセンスセミナー」として開催しています。2014年の第3期受講生33名のうち17名が、1年間のセミナー受講後にJA女性部へ加入したのですが、そのさい、活動しやすいようにと事務局から呼びかけてグループにしたことがきっかけです。現在では24名がメンバーとして活動しています。活動は、年度はじめにメンバーが集まって年間行事を計画して、月に1回講座をおこなっています。講座の連絡方法はグループ長を中心にグループLINEでおこない、参加者もそこでまとめてもらっています。グループLINEには、今年度は参加できずに女性部員になっていないメンバーも20名程度在籍していますが、事務連絡のほかに、活動写真や楽しかったコメント等も送りあうことで、女性部員以外のメンバーとの結びつきも維持できているのだと思います。

エッセンスセミナーの募集チラシ
エッセンスセミナーの募集チラシ

――39歳以下の女性対象とのことですが、セミナー参加の募集・呼びかけはどのようにおこなっていますか?

エッセンスセミナー立ち上げは、後継者を育てるという目的でした。長い人生の中で一度は仕事等でJA女性部の活動から離れたとしても、落ち着いたときにJAへ戻ってきてもらえるよう、若い世代のJAへの理解を深め、親近感を持ってもらえるようなイメージを抱いています。39歳以下と限定したのはこういった理由からです。
 フレッシュミズ層へ声をかけたときの断り文句として、「子どもがいるから(子どもを預けるところがないから)」というのが多いかと思います。ですが、60~70代の女性部員による託児支援グループ「とぴあグランマ」(※)のおかげで、気兼ねなく呼びかけができています。今では60名程度が「とぴあグランマ」に在籍しており、プロのベビーシッターの指導のもと、月1回のセミナー開催時に14、15名程度で託児支援をおこなっています。子どもの数は毎回15名前後のためほぼマンツーマンで見ることができていますし、託児付きということでお子さん連れの参加者も多く、「地域の子育て」が実現できているように感じています

エッセンスセミナーに参加される方は転勤族の方も多く、友達づくりを目的とした方もいらっしゃいます。私自身も経験してきたことですが、若い女性や子育て中の女性には、1人で抱え込まずに悩みを打ち明けられる場所があってほしいという思いがあります。セミナーに参加することで、仲間ができて楽しく日常をおくることができる、子どもを預けている間は自分の時間を過ごすことができる、そんなほっとする居場所を提供したいと考えています。また、託児の前後で、グランマの方たちとやり取りをすることで、子育ての悩みを相談することもできているようです。エッセンスセミナーは、参加者の女性たちにとって楽しいだけでなく、様々な学びの場になっていると感じています。
※「とぴあグランマ」の取り組みは、『家の光』2023年3月号中日本版で詳しく紹介しています。

「とぴあグランマ」による託児支援によって、若い女性がエッセンスセミナーに安心して参加できる
「とぴあグランマ」による託児支援によって、若い女性がエッセンスセミナーに安心して参加できる
「とぴあグランマ」による託児支援によって、若い女性がエッセンスセミナーに安心して参加できる

次世代へと引き継がれる「みのらせ隊」の活動

――「第20回 ザ・地産地消 家の光料理コンテスト」で「フレッシュセルリー餃子と彩りナムル」が、みごと優秀賞を受賞しました。「ハイビスカス‘15」のみなさんが、地元農畜産物の魅力を伝えるためにレシピを考案されたそうですね。

「ハイビスカス‘15」は、昨年から「みのらせ隊」の活動を始めました。「みのらせ隊」は、JAとぴあ浜松管内のセルリー生産者の農作業手伝いを通して産地を守ることを目的とした応援団ですが、メンバーの高齢化が深刻な問題となっていました。そんななか、農業や食への関心が高いメンバーが集まっている「ハイビスカス’15」が、活動を継承することとなりました。活動は11月~翌4月の間で、月に数回実施しており、子どもが学校や幼稚園などに行っている間、とくに午前中に行うことが多いです。メインの活動は、「やご欠き」という、セルリーの生長を促すために軸を残して脇芽や下葉を取る作業です。この「やご欠き」で取った葉が、見た目が悪いからという理由で捨てられてしまうことや、生産者から「餃子に入れるとおいしい」と教えてもらったことをきっかけに、料理好きのメンバーがレシピを考え、セルリーが苦手な人にも食べやすく、家族みんなで食べてもらえるように名物の浜松餃子にアレンジしました。
 JAとぴあ浜松のフレッシュミズのメンバーは、非農家がほとんどですが、食農教育に興味を持っている方が多く、また提案をすると何事にも前向きに検討してくれるので、こうありたいという理想像が実現しやすいです。ゆくゆくは、他の地区の野菜(生産者)についても、「みのらせ隊」のような支援ができたらと考えています。

「みのらせ隊」によるセルリーの「やご欠き」作業と、セルリーを使用した「フレッシュセルリー餃子と彩りナムル」
「みのらせ隊」によるセルリーの「やご欠き」作業と、セルリーを使用した「フレッシュセルリー餃子と彩りナムル」
「みのらせ隊」によるセルリーの「やご欠き」作業と、セルリーを使用した「フレッシュセルリー餃子と彩りナムル」

ポジティブに楽しみながら活動を

――女性部活動全体について、今後の展望をお聞かせください。また、教育文化・家の光プランナーとして心がけていることを教えてください。

コロナ禍の影響もあり、この数年で高齢の女性部員の方が200名(女性部全体は約4,500名)近く退会してしまいました。そのため、次世代の女性部員の育成により一層力をいれていきたいと考えています。現部員のうちフレッシュミズ層が約19%を占めており、着実に若い世代の部員数は増えてきています。ですが、女性部として続けていくには課題が多い現状です。とくに、楽しいことや自分たちがしたいことをするだけで終わりがちなため、女性部を継承していく次世代の女性部員として育てるための方策を模索中です。
 また、食品ロス・家庭ごみ削減に対する取り組みも視野にいれています。生活困窮家庭などの支援として、フードバンクへ食品を提供するフードドライブ活動を、女性部が主体となって展開していけたらと考えています。
 仕事でいちばん大切にしていることは、ポジティブに楽しみながら行うことです。女性部員と一緒に活動していると楽しいです。どんな活動も組合員・女性部員のみなさんと力を合わせ、自分自身も楽しみながら活動することが大切だと思っています。

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