【開催報告】令和4年度JA教育文化活動研究集会
令和4年11月24日、25日に「地域に輝き続けるJAづくり~持続可能なJA教育文化活動の実践を~」をテーマに東京都内で開催。実参加とオンラインとの併催で、全国の50JA・中央会から、担当部課長を中心に73名が参加しました。
主催/一般社団法人 家の光協会 家の光文化賞農協懇話会
後援/一般社団法人 全国農業協同組合中央会
テーマ解題
地域に輝き続けるJAづくり~持続可能なJA教育文化活動の実践を~
明治大学 政治経済学部 教授 大高研道
「地域に輝いている状態」とはどのようなイメージなのかを共有し、その実現に具体的に何ができるのかを考えていくことがたいせつです。一般的に協同組合という非営利団体の認知度は低く、組合員自身が協同組合に加入しているという自覚も希薄です。地域とのつながりを創り「わがJA意識」をもつ人づくりを進めることが教育文化活動の基本ですが、これまでの活動は、一方的で仕事や暮らしとの接点が感じられず、学びと活動が連動していなかった面がなかったでしょうか。
地域の暮らしに根ざして対話型組織へ
地域の暮らしの現実を常に出発点に、地域を知ることが求められます。地域を認識する契機は、組合員の暮らしの要求のなかにあります。協同組合は組合員への一方通行のサービス提供者としてではなく、対話型組織になる必要があります。鍵は「現代的なつながり」の再発見・再構築。協同組合とつながるさまざまなきっかけから、学びや相互理解への芽を育み、地域のなかで持続可能な組織を創っていくことが大事です。
報告①
組織基盤強化へ向けたJA教育文化活動について
東京都JA東京中央 組織広報室 室長
浜田俊宏
准組合員が9割を占める都市型JAで、JAの特性を生かした教育文化活動を展開しています。
組合員活動としては「JAスクール」を、准組合員対策として令和3年7月に開講。資産形成、終活、健康管理、フードの4カリキュラムに3年度は300名が参加しました。今年度は必須講座と選択講座に分けて本店主導から支店主導への転換を図りました。員外へも呼びかけ、准組合員加入につなげていきます。
「JAカレッジ」は、JA運動の担い手育成を目的に2年度から開始。各地区から推薦された24名が、2年にわたり基礎講座と専門講座を学んでいます。年1回実施していた「婚活」は来年度からは2回にし、参加者が笑顔になるような企画を検討していきます。「青壮年部活動」は、地区別を基本に都市農業への理解・仲間づくりを進めています。「女性部活動」は、楽しむ、健康、地域貢献をテーマに各地区年間スケジュールを決めて取り組んでいます。「職員活動」では、管理職や全職員対象の組織基盤強化セミナーなどを開催しています。
広報活動意識づけへ表彰制度
「広報活動」では、広報誌を正組合員、准組合員、地域住民向けの3誌と各支店での『支店だより』を発行。支店への意識づけがたいせつなことから、支店が取り組む広報活動を点数化し、支店広報大賞として毎年事業推進大会で表彰しています。今後とも、組織基盤強化が事業基盤の拡大につながることを職員に伝えていきます。
報告②
JA広島市「地域活性化」への取り組みについて
広島県 JA広島市 生活事業部
地域ふれあい課 課長
加藤尚子
「支店ふれあい活動」は、組合員の生活支援、地域活性化に向けて、支店を拠点として組合員や地域のみなさんとJAがともに取り組む活動です。主な組織活動である「レディースクラブ」は、ほぼ全支店に29支部あり会員数3550名。会議は会員による自主運営で、本店地域ふれあい課ではブロックごとに担当者、支店にも担当者を設置し活動をしっかりサポートしています。レディースのつどいや新聞発行、親睦旅行、各種研修会などが主な活動です。
会員の減少・高齢化は著しく次世代会員の増加が大きな課題です。SNSを活用してクラブの情報を発信し、まずは興味のある活動へ参加してもらい、小さな仲間づくりを増やしていくことから始めたいと思います。
支店ふれあい委員会で双方向のやりとり
「支店ふれあい委員会」は令和4年4月、全支店で運営要領に基づく運営がスタートしました。組合員・地域の声を聞き、地域の活性化と支店の発展をめざします。JAからの一方通行ではなく双方向のやりとりで、委員相互の連帯意識を高める役割も担っています。
「家の光三誌」は、JAを知ってもらうテキストとして普及運動に力を入れています。レディースクラブでは、『家の光』を活用した活動に助成金制度を設けています。管内全公立小学校への『ちゃぐりん』寄贈など、次世代への取り組みも行っています。教育文化セミナーは平成23年度から階層別に実施、職員自ら考え、相互研鑽に励み行動する機会となっています。提案
アクティブ・メンバーシップの強化に
JA教育文化活動・家の光事業を積極的に活用しよう
家の光協会 協同・文化振興本部 本部長
秋谷 進
「10分家活」で教育文化活動の風土づくり
アクティブ・メンバーシップの確立は、“わがJA意識”を高めJAファンを増やす取り組みで、JA教育文化活動と表裏一体の関係にあります。JAが得意なコミュニケーション力を伸ばし、組合員との関わり度合いを高めて、競争力を勝ち取るのが教育文化活動です。既存の組織を見直し「固める」一方で、新たなつながりづくりで「拡げる」活動を、家の光事業を活用して進めていくことを提案します。
参加JAの事例紹介
神奈川県 JA相模原市 組織相談部 部長
野中正宏
食農体験やSDGsに力を入れる
JAとの接点づくりで「食農体験教室」を管内の小学校や保育園で実施しています。営農指導員等が出向き、青壮年部も協力のうえ、米やサツマイモなどの収穫までの作業を指導しています。JAや協同組合の理念を知ってもらう取り組みとしては、地域の方々と、フードドライブを中心にSDGsに力を入れています。女性会が作成したチラシを支店窓口で配り、エコキャップ回収運動も実施しています。直売所では地産地消の料理教室を開催しています。
参加JAの事例紹介
岐阜県 JAひだ 経営企画部 部長
日下部伸二
組合員・利用者のアンケート
組合員の声を聞く取り組みとして、中期3か年計画・単年度計画へ意見や要望を反映するべく、平成28年度よりアンケートを継続実施しています。自己改革の進捗状況や評価に基づき丁寧に説明し、組合員との対話運動に結びつけるため、今年度は約700名を対象に、書面とWeb回答コースを用意し11月に実施。集計結果を来年度の事業計画に反映するようめざすとともに、冊子を作成し店舗に設置、ホームページでの掲載も考えています。
特別報告
協同組合としての役割発揮を支える人づくり
JA全中 教育部 部長 木村政男
「共感」を出発点・原動力に
第4次「JAグループ人づくりビジョン全国運動」では、農業協同組合らしい人づくり等、組織基盤確立に向けた人づくりを実践中です。組合員、職員ともに、「研修」だけで人が育つわけではなく、実践的な協同組合の学びの場がたいせつです。組合員がJAの事業・活動を知り「わがJA意識」をもつ、職員が組合員の悩みや願いを実感することが大事です。
キーワードは「共感」。「JAなら」という信頼から、JAに集い協同することで課題を解決することが本来の協同組合の価値で、それが「地域に輝き続けるJAづくり」になります。組合員の「声を聴き」悩みや願いに「共感する」ことが出発点・原動力。それが教育文化活動のねらいではないでしょうか。
全体討議
〈コーディネーター〉
明治大学 大高研道
〈パネリスト〉
JA東京中央 浜田俊宏
JA広島市 加藤尚子
家の光協会 秋谷 進
主体的な活動を促すために
大高 報告いただいた2JAに質問が寄せられています。
浜田【職員目標の廃止について】目標・実績主義が強く、組合員目線ではなくJA目線での推進になっていたとの反省から、組合員の課題に向き合う提案型の推進スタイルに変更し、職員目標を廃止しました。共済事業では一人ひとりに合った提案を徹底。目標廃止後も前年同様の実績が出ています。
【女性部活動の「農家レシピ」について】広報誌等で農家のレシピが知りたいとの要望が多かったので、「農家レシピ」の作成・配布を1月から始めます。加藤【レディースクラブの活動について】SDGsの活動実践など地域貢献活動に力を入れ、人に喜んでもらうことで自身も感動するような活動に取り組んでいます。事務局として事前打ち合わせは念入りに行いますが、会員同士で主体的に活動いただくようにしています。会員の意見を会長・副会長に引き出してもらうなどしながら、会員の声が職員を動かす形を心がけています。
大高 目標と評価をセットで考える発想を変えるだけでも違ってくると思います。事務局には“支援しない支援”の姿勢も必要なのでしょう。
職員の意識づくりと組合員との対話から
大高 ご参加の皆さんに「わがJAの実践計画案」を書いていただいたので発表を。
JAグリーン近江・総務課長・福田真由美 “わがJA”意識の醸成には組合員との対話が必要で、普段からの関係づくりが重要です。それにはまず、事業体と運動体の両輪でJAが成り立っていることの理解を職員に促すことがたいせつで、「10分家活」を有効に活用していきたいと思います。
JA上伊那・総務課長・岡野千文 コア組合員の“わがJA”意識の醸成が課題で、組合員大学の開催が必要と感じています。役職員の組織基盤強化への認識を高めるため、今年から週1回朝礼時に『1時間でよくわかる楽しいJA講座』(北川太一著、家の光協会)をテキストに読み合わせを行っています。
JA横浜・組織生活課長・西田悦子 組合員の意思を反映し組織基盤強化につなげていけるよう、「支部座談会」を開催し、常勤役員や部課長等が女性部の全支部を回り、じっくり対話し意見を吸い上げる活動を進めています。今年は女性部20周年企画として、地元の魅力を部員同士楽しみながら撮影し、ユーチューブで発信しています。
JA山口県・組合員組織課長・安岡博文 “わがJA”意識の醸成には、役職員が活動の目的等をしっかり意識することが重要です。信頼される職員を育てるため、『家の光』などで情報収集して読解力、考えをまとめる力、意見を発表する力を養い、組合員との対話力を育成する取り組みを昨年度始めました。
JAきみつ・組織対策課長・小柴祐佳 組合員と職員がともに学ぶことで接点をつくりたいと考えています。組織基盤強化に対して本店職員と支店・事業所職員間で意識の温度差があると感じています。組織基盤強化セミナーを階層別に開くことから始め、『家の光』読書会を取り入れ教育文化活動につないでいきたいです。
大高 最後にパネリストのみなさんから。
浜田 JAが組合員から離れているという問題意識を抱えるなか、みなさんから直接お話を伺うことができ、組合員に接する活動が組織基盤強化につながっていくことをあらためて確信しました。
加藤 報告の機会をいただいたことで、自分たちの取り組みを振り返る作業を上司や担当常務の協力もいただきながら行い、自分自身あらためて、これまでの活動を把握し、整理することができました。
秋谷 アクティブ・メンバーシップを確立することがJAの組織基盤、事業基盤の確立につながるということは、第29回JA全国大会でも決議されました。教育文化活動に対する役職員の理解を醸成し、温度差をJA教育文化セミナー・研修会などで埋め、地道に活動することが重要です。
まとめ
明治大学 政治経済学部 教授 大高研道
地域の拠り所としてのJA
教育と文化活動は、互いに関連する一体的なものと捉えて初めて、人間的な生活や暮らしを取り戻す協同の学びが展開できます。持続可能な組織・事業基盤は、持続可能な地域の実現なしに考えられません。これをしっかり踏まえ地域、組織、事業を一元的に捉えた活動をしていくことに、教育文化活動の重要な役割があります。
“わがJA”意識を高める教育文化活動は、まず地域をしっかり知ることが大事。地域の声やニーズが協同の学びへと展開し、新たな活動・事業を生み出します。きっかけは何でもいい。その先に学びや相互理解へ展開する芽があります。
「JAとつながっていれば何とかなる」という基本的信頼を、組合員・地域住民がもてるかが課題です。地域の中に協同の価値の持続的な関係を根づかせるために、教育文化活動を展開すること。それが地域の拠り所としてのJAの価値になり、さらに深化していくことが、地域に輝くJAの未来につながるのではないでしょうか。
公開日:2023/02/01 記事ジャンル:開催報告 配信月:2023年2月配信 タグ:「家の光三誌」等の活用 / JA広島市 / JA東京中央 / 地域づくり / 女性組織活性化 / 役職員学習 / 情報・広報活動 / 支店協同活動 / 教育文化・家の光プランナー / 教育文化活動の体制整備 / 組合員組織の活性化