【開催報告】令和4年度教育文化・家の光プランナー専修講座(オンライン開催)
「教育文化・家の光プランナー」のJA職員のみなさまを対象に、JA教育文化活動の効果的な実践に向けたスキルアップを支援するため、オンラインによる専修講座を7月19日~9月30日の期間で配信しました。主な内容を紹介します。
プログラム
1.開会 木下春雄(家の光協会 常務理事)
2.報告 秋谷進(家の光協会 協同・文化振興本部長)
3.提言 石田正昭氏(京都大学 学術情報メディアセンター研究員)
4.実践報告① 西尾嘉文氏(京都府JA京都やましろ 総合企画部ふれあい課長)
5.実践報告② 廣瀬知志氏(福岡県JA福岡市 経済部食農福祉課長)
6.特別報告 今中秀典氏(家の光専門講師)
7.情報提供 久保野剛(家の光協会 読書・食農・教育文化部長)
8.まとめ講義 石田正昭氏
提言
いま、なぜ教育文化活動の実践が求められるのか~協同組合運動の原点から考える~
三重大学 生物資源学部 特任教授
京都大学 学術情報メディアセンター 研究員
石田 正昭 氏
※肩書きは、専修講座開催当時のもの
協同組合のアイデンティティを理解する
協同組合は、組合員・利用者の困りごとに寄り添い、力を添え、その問題解決への道筋をつける団体です。各協同組合にはそれぞれの歴史や役割がありますが、助け合いのこころ(相互扶助)をたいせつにする点は同じです。
第29回JA全国大会決議では、JAグループのめざす姿(10年後)と、重点的に取り組む、営農、地域・くらし、経営、人づくり、広報に関連した5つの柱が掲げられました。
5つの柱は、食と農を基軸に地域に根差した協同組合をつくることをめざしています。JAの諸活動が連鎖したかたちでの創発(思いもよらない新たな発想や成果が生まれること)が期待されます。併せて、JAが組合員と接する際には、人権(老若男女の隔てのないこと)や自主性の尊重、活私開公(かっしかいこう)を重視することが求められます。
活私開公は公共哲学で用いられる用語で、自らの趣味や特技、考えなど、“わたしを生かし公共(社会一般)の役に立つ”という意味を持ちます。
「ばらける個人」を「つながる個人」へ
助け合いに満ちた社会づくりを進めるためには、協同する場面を数多く作り出す必要がありますが、共同体に属していた個人は、平成の時代になってばらけていきました。協同する場面を再びつくるには小グループ活動を奨励し「つながる個人」を作り出すことが重要です。その際、役割を発揮するのが教育文化活動です。
「ばらける個人」を「つながる個人」へ[PDF]組合員によるJA利用が絶対的ではなくなった現在、組合員が主体となる「自主的農協」へ転換するためには“JAファン”づくりが最優先課題です。ぜひ、組合員の活私開公を引き出すことを教育文化活動の中心に据えてください。
具体的には、組合員と〈対話〉し、蓄積した定性データを関連付けて〈情報化〉し、ありうる一つのストーリーを完成させ、実行に移すための支援策を〈決定〉し、ターゲットとする候補者に相談をかけるとともに〈実行〉を働きかけ、組合員活動のコアになるメンバーを育成することをくり返していく必要があります。教育文化・家の光プランナーや担当者の腕の見せ所です。
組合員のあいだで数多くの活動グループをつくるなど、活私開公で地域共生社会を実現してください。JA内部で自己完結せず、他の協同組合・地域の他組織と連携することもたいせつです。
実践報告①
地域で「つながり」次代へ「つなぐ」教育文化活動の実践
京都府JA 京都やましろ
総合企画部 ふれあい課 課長
西尾 嘉文 氏
JA内での連携を強化し、活動を活性化
当JAでは教育文化活動を「JAくらしの活動」として事業計画で取り組みを掲げ、活動費助成や表彰を制度化しています。
JA全体の実施要領に基づき、支店長を中心に支店の実施内容を検討、運営協議会で決定し、活動を実施し報告する仕組みです。本店が進捗状況を取りまとめ、各会議での報告や年度末に審査して、次年度の決起大会で表彰します。その際、審査講評で優れている点を公開し、他支店で取り入れられるよう工夫しています。
支店では、JAまつりや食農教育など、多様な活動を展開。今後は、活動のマンネリ化防止や、地域住民へのPR、事業推進部門と連携し、活動の参加者層に合わせた事業案内に取り組みます。
本店の活動では、小学生向けの食農教室「ちゃぐりんスクール」や、女性大学のほか、多様なセミナーを開催し、支店や事業推進部門との連携強化に取り組んでいます。
女性部活動は部員数減少や活動のマンネリ化などの課題もありますが、部員の口コミの力や、部員が主体的に活動し「自ら活動している」ことを実感すると満足度も高まります。
既存読者の『家の光』活用に注力
『家の光』の普及活用運動では既存の読者に目を向け、まずは活用を促進するため、女性部での読み合せや職員の朝礼で活用するほか、全購読者へ家の光協会が作成した「10分でわかる!家の光活用術」の「家の光クイズ」を配布。答え合わせをしたり、隣の記事を読んだりと活用するきっかけを作っています。
教育文化活動が人と人とのつながりを強め、つながりが活動を広めます。まずはやってみること。失敗を繰り返しながら内容を改良していくことも重要です。
実践報告②
職員の意識を高め、地域に輝くJAをめざす~教育文化活動の実践~
福岡県JA福岡市
経済部 食農福祉課 課長
廣瀬 知志 氏
教育文化活動を“見える化”する
教育文化活動における支店行動計画の策定・実行の重要なポイントは、組合員・組織が一丸となった取り組みにすることです。
具体的には、①豊かな自然を次世代に残す、②農業の理解を深める、③食と農のたいせつさを伝える、④地域に貢献、⑤組合員・利用者の資産・生活を守る、⑥地域が一体となれる、こと。
しかし職員にも、教育文化活動は女性部のサークル活動だという認識が散見されました。そこで、職員意識を高めるため「情報発信し“見える化”」「コンプライアンス研修に『家の光』記事活用を提案」に注力しています。
対話運動や職員研修に記事を活用
情報発信では、『家の光』の記事活用を集約した「家活メール」など、組織活性化のヒントになるチラシを配布しています。また、所得増大につながる自己改革の具体的な成果や、総合事業・准組合員の意思反映の必要性関する理解促進、食と農に関する幅広い話題を提供し、担当課として組合員との対話活動を盛り上げています。
職員が毎月行うコンプライアンス研修での記事活用では、接客のコツや快眠術などを提案し、25支店・事業所で54回活用されました。記事活用とともに職員の対話力向上にもつながりました。
また、毎年JAの新入職員と、当JAを代表する大豆加工グループ「まめひめ」の新規メンバーに、味噌造り教室と併せて教育文化活動の研修を行います。食農教育はJAの利益によって行っていることなど、仕組みを伝えています。
今後は『家の光』の記事を活用し、元気な高齢者が地域で自立した生活が送れるよう支援するミニデイサービスなどをさらに活性化してまいります。
特別報告
教育文化・家の光プランナーOBとして~『家の光』を通じた教育文化活動と人づくり~
家の光専門講師
今中 秀典 氏
組合員が主役のJAづくり
令和3年度までJAグリーン大阪の職員として教育文化活動に携わってきました。同JAでは教育文化活動を、組合員の心豊かな暮らしや充実した生活を実現するため、食と農を中心として、健康や環境、生きがいづくりやくらしの設計などにおいて、総合的にかかわる活動と位置づけています。
組合員が主体的に地域で活躍できるよう、直売所を核に、食や健康に関する活動を行い、都市農業の周知と理解を広めました。リピーターが増えれば事業利用が進み、JAファンが増えれば、さらに口コミで広がっていきます。
女性部活動では、JAが何を求めているのかを正確に伝えながら、職員を含め全員が楽しく活動ができるように注力しました。
教育文化活動はJAの活動をつなぐ扇のかなめ
『家の光』は、他のJAの活動から発想のヒントが得られる教科書です。窓口担当者が組合員との会話で話題にできるような記事内容を、イントラネットなどで職員に周知しました。
教育文化活動は、多種多様な部署を教育文化活動によって連結させる、扇のかなめです。
9.家の光プランナーの役割・課題[PDF]数字に表れにくいため、教育文化・家の光プランナーを含む担当者はモチベーション維持に苦労するかもしれませんが、JAの総合力を発揮し、人と人、事業と組織などをつなぎ、人を育て、次代につなぐ重要な役割を担います。
そして、教育文化活動はJA運営の基盤でもあります。基盤があるからこそ事業活動も成り立ちます。ぜひ今一度、行動指針である「JA綱領」への理解を深めてください。
また、人づくりが事業の利用拡大につながるポイントです。職員がJAファンでなければ人づくりはできません。ぜひ、JAが好きな職員を増やしましょう。そのカギとなるアイテムが教育文化活動です。
まとめ講義
教育文化・家の光プランナーに期待する
三重大学 生物資源学部 特任教授
京都大学 学術情報メディアセンター 研究員
石田 正昭 氏
全国のJAで実践される“活私開公”の取り組み
教育文化・家の光プランナーは正しい情報とその意味を、組合員・職員に正しく伝えることが重要です。情報の共有なくして認識の共有はなく、認識の共有なくして理念の共有はありません。
組合員数や事業総利益の減少を食い止めるには、優れた役員が優れた職員を、優れた職員が優れた組合員を、優れた組合員が優れた役員を育てる好循環を、対話と学習のなかから生み出す必要があります。教育文化・家の光プランナーは役員と職員のあいだに立ち、協同組合らしいやり方を提案する重要な役割を担っています。
好循環のJA運動[PDF]具体的な活動では、鳥取県JA鳥取いなばでは、営農活動からはじまって、組合員活動全体の活発化へと導くことを目的として、複数の戦略を連鎖させることで組合員を結集しています。
岐阜県JAひだでは、ギャラリースペースと助け合い組織、支部女性部「合唱グループ」の三者がつながり、ミニデイサービスを実践しています。
地産地消活動にも更なる発展があり、大阪府JAグリーン大阪では地元産食材を食育イベントなどで食べる“地産地食”の企画を創発、また、滋賀県JAこうかでは農家・JA・地域の地産地消協力店が異業種間で連携した“地産地商”に取り組んでいます。
さらにまた、京都府JA京都やましろの支店表彰制度のように、支店間の協同活動のバラツキをなくす取組みもなされています。
福岡県JA福岡市の大豆加工グループ「まめひめ」は、活動参加者が活動自体を楽しむだけでなく、伝統食の継承などの学びの場を提供する満足感や、社会に役立つ充実感を感じています。まさに“活私開公”の典型です。
組合員とともに職員も“JAファン”に
今回事例発表された方々は、家の光大会の普及・文化活動体験発表で受賞するなど、“JAファン”として活躍されています。
教育文化活動は担当者だけではなく、全職員が担うべき活動です。家の光協会のWebサイトでは『JA教育文化Web』の配信が始まりました。紙媒体より読みすい環境が構築されたこの機会に、ぜひ全職員に目を通すように奨励し、自己学習に役立ててください。
また、プランナーのみなさんはぜひ『JA教育文化Web』の「トップ対談」の感想文を組合長へ提出してください。多様な提案を行うことで、良い連鎖反応が広がる起爆剤にしてほしいと思います。
公開日:2022/10/03 記事ジャンル:開催報告 配信月:2022年10月配信 タグ:JA京都やましろ / JA福岡市/教育文化活動の体制整備 / 役職員学習