令和4年度JA生活文化活動担当者パワーアップ研修会

令和4年度
JA生活文化活動担当者パワーアップ研修会

主催:一般社団法人 家の光協会
後援:一般社団法人 全国農業協同組合中央会

JAにおける生活文化活動担当者の育成と女性組織の育成強化、活性化の支援を目的に、「JA生活文化活動担当者パワーアップ研修会」を6月27日~28日の2日間で行いました。3年ぶりの実開催にもかかわらず、計16JA中央会・27JAの参加をいただき、盛会裏に終了いたしました。研修会プログラムの中から、課題提起、基調報告、2JAからの実践報告、パネルディスカッションの内容についてご報告します。

プログラム

1日目 6月27日(月)

  1. 開会・あいさつ  木下春雄(家の光協会 常務理事)
  2. 課題提起  箕浦隆浩氏(家の光専門講師)
  3. 基調報告  熊田陽介(家の光協会 普及文化本部 副本部長)
  4. 実践報告①  山口直子氏(JAふくしま未来 福島地区 地域支援課 地域支援係長)
  5. 実践報告②  棚橋美枝氏(JAぎふ 相談部 生活ふれあい課)
  6. 情報交換会  「生活文化活動」わたしの活動プラン作成
  7. 情報交換会報告

2日目 6月28日(火)

  1. 活用講習  佐久間幸子氏(家の光専門講師)
  2. パネルディスカッション
    コーディネーター:箕浦隆浩氏(家の光専門講師)
    パネリスト:佐久間幸子氏(家の光専門講師)
    山口直子氏(JAふくしま未来 福島地区 地域支援課 地域支援係長)
    棚橋美枝氏(JAぎふ 相談部 生活ふれあい課)
    髙橋秀樹(家の光協会 普及文化本部 本部長)
  3. まとめ  箕浦隆浩氏(家の光専門講師)
  4. 閉会・あいさつ  髙橋秀樹(家の光協会 普及文化本部 本部長)

“対話”で組織活動活性化を進めよう

箕浦隆浩 家の光専門講師

箕浦隆浩 JAぎふ、家の光専門講師

現状、JAは人口減少や高齢化、新型コロナウイルス感染症による活動の制限といった課題に悩まされており、組合員やJA職員の協同組合・協同活動への理解も次第に薄れていっています。このままでは、我々がこれまで築き上げてきた生活文化活動の存続も危ぶまれてしまいます。

だからこそ、我々は改めて“対話”の重要性について認識する必要があります。組合員との信頼関係の構築、次世代組合員との関係づくり、JA職員への意識付けや教育、組合員からの相談や悩みの解決など、すべてにおいて“対話”は協同活動のきっかけとなります。「できないこと」が当たり前になりつつある時代の中でも「できること」を考え、組織活動の活性化を進めることが重要です。

今後とも、JAには引き続き生活文化活動の意義を確認していただき、職員の意識改革のために必要なことを考え、進めていただきたいと思います。

JA生活文化活動をパワーアップ! 「家活」の実践

熊田陽介 家の光協会 普及文化本部 副本部長

熊田陽介 家の光協会 普及文化本部 副本部長

わたしたち家の光協会が、なぜここまでJA生活文化活動を推進するのかと申しますと、生活文化活動の活性化とJA事業の利用には大きな関係があるからであります。一般社団法人農業開発研修センターの調査によると、JA支店の組織活動と事業実績は相関関係にあり、JA生活文化活動担当者のみなさまの取り組みひとつひとつが、JA事業に多大な影響を与えているという結果が出ています。

そして、このパワーアップ研修会は、JA生活文化活動を企画・実践する担当者の能力向上、JA生活文化活動の充実・発展に果たす家の光事業の役割と実践方策についての相互研究、参加者同士のネットワーク化を目的に開催しています。組合員活動に参加する主役となる組合員づくり、JA生活文化活動を通じた組合員組織づくり、仲間づくり、JAファンづくり、次代につなぐ魅力的で自立した活動の創出に、ぜひ家の光事業を役立てていただきたいと思います。

JAふくしま未来 女性部とグループ活動

山口直子 JAふくしま未来 福島地区 地域支援課 地域支援係長

山口直子 福島地区 地域支援課 地域支援係長

当JAでわたしが活動している福島地区は、現在104グループの目的別グループが存在します。グループ活動は、文化の伝承や技術、知恵や知識、経験の習得、そして地域の活動と地域の活性化につなげていくことが目的です。そして、これらの活動は部員の自発的な思いや願いを基本としています。JA担当者は必要なときに手伝うだけであり、JAふくしま未来における目的別グループ活動は、原則として組合員による自主的な運営活動です。

実践報告1資料

グループの設立についても難しい条件は出さず、①グループの構成員が女性部員であること、②おおむね5名以上のグループであること、③年間6回以上の活動を計画するグループであることの3つの条件を、まずは達成してもらうようにしています。年度末にはグループ活動報告書を提出してもらい、自分たちの活動を振り返り、来年度の活力にしてもらうようにしています。また、家の光大会等でグループ活動の表彰を行うことで、小さな活動でも評価してもらえる機会を提供するようにしています。

女性部の活動は無償の愛から始まる

2011年に東日本大震災が発生したときには、福島市内に避難者がいることを受けて炊き出しを行い、女性部で累計10万個のおにぎりを配布しました。自分たちの生活もままならない部員もいましたが、この状況でも女性部としてできることは何かないかと考え、部員で結束し迅速に行動しました。また、新型コロナウイルス感染症が広まり始めてマスク不足に陥ったときも、女性部長の行動をきっかけに女性部で自前のマスクの製作を開始し、子どもたちや医療関係者、高齢者に配布しました。

こうした活動は、すべて女性部のみなさんの無償の愛によるものです。わたしたちの暮らしや食と農を取り巻く環境は次々に変化していますが、だからこそ女性部全体の思いをひとつにし、学習活動や地域活動に積極的に参加してもらうことが重要です。わたしたちは、これからも女性部のみなさんに寄り添い、活動を支えていけるようサポートしていきたいと思います。

JAぎふの生活文化活動
~with コロナ時代における組織活動~

棚橋美枝 相談部 生活ふれあい課

棚橋美枝 相談部 生活ふれあい課

JAぎふの女性部活動の多くは、「ミセスライフ」と呼ばれる小冊子に掲載される内容をもとに行われています。

実践報告2資料①

支部活動やグループ活動の参考となるメニューを多く掲載、活用することで、女性部の増員や新しい活動につなげています。そのため、JAぎふでは得意技を持つ女性部員が講師となり、その得意技を生かした活動を広める「おHIROME隊」制度や、家の光小グループ協議会が情報交換などを目的に開催する「ときめきサロン」と呼ばれる交流会など、ユニークな女性部の活発な活動を見ることができます。

コロナ禍の影響で大人数ではなかなか集まれないことを逆手に取り、2021年から少人数による小グループでの活動を進めることによって、女性部に限らない幅広い方にJAをよりどころにして活動いただいています。

実践報告2資料②
事務局も、まずは「楽しむ」ことから

近年は若い組合員が所属するフレミズ組織「はあとセレ部」の活動も活発ですが、女性部だけではないさまざまな世代の組合員との対話が重要となっています。そのため、JAぎふでは組合員の組織活動とその主たる担当者である支店長と女性との橋渡し・コーディネートを行う「あいサポーター」と呼ばれる職員を全支部に配属し、地区での組織基盤強化に努めています。若い世代からミドル、エルダー世代まで、多様な世代が参加しやすい活動が実施できるよう、サポート体制を強化していきます。

JA組織活動の主体は組合員であり、事務局であるわたしたちはあくまで脇役、世話人です。しかし、同時に組合員のやりたいことを行動に移す気持ちを引き出し、わたしたち自身も活動を楽しみ、女性部員、組合員と一緒に成長していくことが大切です。

①ハッピー マイライフ運動
 値上げラッシュに負けない家計防衛術
 ~記録・見える化・振り返り いまこそ家の光家計簿を!~

②はじめましょう! 10分家活

佐久間幸子 家の光専門講師

佐久間幸子 家の光専門講師

物価の上昇を受け、ガソリンや小麦粉といった日用品が値上がりしています。新型コロナウイルス感染症や世界情勢の緊迫化により、日用品の値上げはこれからさらに続くことが見込まれます。他にも、老後や自然災害に対する不安など、わたしたちの生活には憂慮する話題が後を絶ちません。

そこで、今こそ家計を守るために家計簿記帳や資産管理を行うことが求められています。たいせつなことはお金の動きを「記録」するだけで終わらず、その記録を「見える化」して「振り返り」を行うこと。「①記録→②見える化→③振り返り」の一連の流れが定着することで、家計における無駄や浪費を早期に発見し、省くことができます。無理な節約には頼らず、家計管理を習慣化することで浪費癖を把握しましょう。

活用講習資料①

また、『家の光』12月号には、そんな家計管理を助けてくれる家計簿が付録として付いてきます。その他にも『家の光』には、活用することで家計をはじめ生活がちょっぴり豊かになる内容が満載です。まずは、10分だけでも『家の光』を読んで活用してみる、「10分家活」から取り組んでみませんか。

家計簿記帳で、お金との適切な付き合い方を見つける

自分にとってのお金との適切な付き合い方を見つけることは、自分の人生や家族の生活を賄うことにもつながります。物価の上昇による値上げは、たしかにわたしたちの生活をひっ迫させていますが、人生における一つの節目だと思って、改めて家計管理やライフプランを見つめ直してみてはいかがでしょうか。

活用講習資料②

生きていくためにお金は必要ですが、お金がすべてではありません。自分が今、本当にためなければいけないものは何か、家計を守るためにできることは何かを、家計簿記帳によって考えてみましょう。

パネルディスカッション

パネルディスカッション・コーディネーター

箕浦隆浩 家の光専門講師

パネルディスカッション・パネリスト

佐久間幸子 家の光専門講師
山口直子 JAふくしま未来 福島地区 地域支援課 地域支援係長
棚橋美枝 JAぎふ 相談部 生活ふれあい課
髙橋秀樹 家の光協会 普及文化本部 本部長
パネルディスカッション

箕浦:まずは実践報告について、山口さんにお聞きしたいと思います。JAふくしま未来では、目的別グループ活動の規模や予算など、計画を立ててグループ活動報告書を出していただいていると思いますが、事務局ではその管理をどうしているのでしょうか。

山口:報告書の提出については、事務局でも厳しく管理はしないようにしています。しかし、出していただいた報告書の内容をもとにグループ活動の表彰を行うので、報告書の提出には一年間の活動の節目として、また次年度の活動への展望をしてほしいという意味も込められています。ただ、提出についてはあくまで担当者に一任しています。

箕浦:続いて棚橋さんへお聞きします。あいサポーターになった職員は、どのような意気込みを持って仕事に取り組んでいるのでしょうか。また組合員の方とどのようなコミュニケーションをとっているのでしょうか。

棚橋:JAぎふでは、あいサポーターに限らず、全職員が組合員の暮らしのお手伝いをするうえで、組合員との対話を大切にしています。あいサポーターは窓口業務との兼任で大変だとは思いますが、そこでできたつながりを大事にしてほしいですね。「JAのあの子に頼まれたから嫌とは言えない」とおっしゃってくれる女性部さんもいらっしゃるので、組合員とのそういったコミュニケーションが結果として事業につながることが多いです。

箕浦:続いて、女性部さんの自主性を育む秘訣について、パネリストのみなさんに意見を伺いたいと思うのですが、いかがでしょうか。

佐久間:女性部さんに自主的に活動してもらうことはなかなか難しいですが、一緒にやる人を募る、少人数でやって楽しい活動を続けてもらう、得意技を活用してもらうなどは効果的なアプローチだと思います。活動のモチベーションを上げる発表の場を作るなど、JA側からの歩み寄りもたいせつですね。

山口:佐久間先生のおっしゃる通りで、やりたい人がやりたい人同士で集まれるような場を設定することは重要だと思います。自主的でポジティブな活動は、女性部はもちろん、JA担当者のモチベーションにも大きくつながると感じますね。

棚橋:JAぎふでも、女性部フェスタや交流会といった、女性部のみなさんの普段の活動を発表する機会を提供しています。目的を持って集まり、活動している人たちはそういった場に対しても積極的なので、交流や発表の様子をもっと発信していきたいですね。

髙橋:家の光協会でも、「星の数ほど記事活用グループを作ろう」と推進しています。組合員との対話の中で思いを聞き出した上で、やりたい活動は自主的な運営に任せる。ぜひ『家の光』も活用いただき、新たな目的別・小グループ活動につなげていただきたいと思います。

パネルディスカッション

箕浦:最後に、パネラーのみなさんに一言ずついただきたいと思います。

佐久間:コロナ禍が落ち着いてから活動を再開するのではなく、今からでもできる目的別・小グループ活動から始めることが組織活動の活性化への第一歩だと思います。そして、そのときにヒントを与えてくれるのが生活文化活動や『家の光』だと思います。

山口:JAふくしま未来でも、小グループが活発に活動しているからこそ、結果として大きな活動につながっています。こういった活動の輪がまわりにも浸透していけばよいと感じますね。

棚橋:目的別・小グループを作るには、JA職員の協力が不可欠です。組合員のみなさんの声を聞いて、いっしょになって考えるともっと広がっていくのではないでしょうか。

髙橋:2023年2月の第64回全国家の光大会では、これまでの記事活用体験発表や普及実績表彰に加えて、家活グループの結成拡大実績表彰も行う予定です。ぜひ、全国のJAで積極的に目的別・小グループの結成を推進していただき、家活グループの新規登録者を拡大して活動の活性化に役立てていただきたいと思います。

まとめ

箕浦隆浩 家の光専門講師

箕浦隆浩 JAぎふ、家の光専門講師

わたしたちの生活は、コロナ禍を転機にさまざまな変化を求められてきました。しかし、それは改めて生活文化活動や女性部活動を見つめ直すきっかけになったとも言えます。大規模な活動が制限されているからこそ、小規模で多様な状況に柔軟に対応できる目的別・小グループ活動を推進する意味は大いにあります。組合員による自主的な活動の運営を、ぜひ生活文化活動担当者のみなさんにはサポートしていただきたい。

そして、まずはみなさんから生き生きと、自信を持って生活文化活動に取り組んでほしいと思います。全国家の光大会や家活グランプリなど、みなさんの活動を評価する場を家の光協会は用意しています。全国の仲間たちと手を取り合って、さまざまな情報を共有しながら、協同の精神のもと、これからも元気に活動していきましょう。

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