【教育文化・家の光プランナー】人と人とがつながる「JAファンづくり」の実践 プランナーOB/家の光専門講師 今中秀典

今中秀典 家の光専門講師/JAグリーン大阪元職員

今中秀典 家の光専門講師/JAグリーン大阪元職員

いまなか・ひでのり/昭和55年に旧英田農協入組。以降、信用、共済、総務、監査、ふれあい、広報担当部署を歴任。平成31年「第61回全国家の光大会」普及・文化活動体験発表にて会長特別賞受賞。令和4年2月JAグリーン大阪を定年退職。現在に至る。

教育文化活動との出合い

――旧英田(あかだ)農協職員だった頃の印象的なことを教えてください。

昭和55年3月に旧英田農協に入組し、昭和57年4月から東花園駅前支店(現花園ラグビー支店)の複合渉外を担う外務員として住宅・商業地域を担当しました。

当時は月に1度の全職員集会があり、『家の光』が配布され、参事より組合員教育の重要性と地域農業協同組合としての考え方を教授いただきました。これが、私と教育文化活動との初めての出合いだったと思います。

そのころ、英田農協では一職員一プロジェクト参加が推奨されていました。私は年齢が若かったこともあり、「こども行事」の担当となりました。

こども行事担当に必要なスキルは、当時あった農協図書館の館長から教わりました。農協図書館は、近隣に図書館がなかったことから造られた施設です。学習室があり、英会話教室なども開講。近所の子どもたちが通う、地域の憩いの場となっていました。館長は組合員教育に対し信念を持った方で、教育文化活動の取り組み方や歌、ハーモニカ、フォークダンス、キャンプファイヤーについてなど、さまざまなレクチャーを受けました。

――農協図書館は、まさに組合員の願いや課題をかなえる施設だったのですね。 こども行事にはどんなものがありましたか。

主に、農業体験、工作、写生、親子料理、昆虫採集、「夏休みこども村」などがあり、特に夏休みこども村は人気でした。地域の子どもたちが親元を離れ、2泊3日で農家民宿に宿泊し共同生活をおこなう、というものです。

「夏休みこども村」1年の流れ像

この経験をとおして、参加していた子どもたちや組合員との心強い信頼の輪が形成されました。勤務地や外務担当地区が変わっても、よく見知った組合員が必ずおられます。そして40年が経過した今でも、JAのイベントに当時の子どもが組合員となって今度は自分の子どもを連れて参加してくれて、他の各事業においても相談に来てくれます。そうした親子三世代でのお付き合いは私の大きな財産です。今振り返ると、この夏休みこども村が教育文化活動の原点だと思っています。

――親子三世代でのお付き合いとは、まさに「つながりづくり」の生きた例ですね!

教育文化活動の具体的な実践

――「ファーム・マイレージ²運動」や「組合員美術作品展」「歩こう会」、また近年の多様なイベント展開が魅力的です。

「歩こう会」の様子
「歩こう会」の様子

教育文化活動は継続することが最も重要だと考えています。

毎年同じ内容の継続では、新鮮味がなく飽きられてしまいますし、担当者も「ワクワク」しません。マンネリ化で活動の趣旨が明確に伝わりません。年度計画(中長期)策定時には、必ず新しい1、2項目を盛り込むようにしてきました。また、まったく新しいことの挑戦ばかりでなく、過去の内容を考察して刷新・修正していくことも重要だと考えます。例えば、イベント内容の棚おろし。一度、イベントの内容を全部書き出してみると、もっと工夫できるポイントなど新しい発見があります。

計画は事務局全員で知恵を出し合い、担当者任せにはせず、役席に関係なくいっしょに取り組みます。提案したことが形になり、ともに協力し達成感を味わうことを大切にしてきました。そして、他の課との連携や採算を考えて費用を削減し、実施日や内容を正確に職員へ伝わるようにしてきました。数字に表れる活動ではないからこそ、内部広報が大切です。

また、企画は妥協せず確実に進捗管理できるようにします。「コツコツ」というと小さなことを少しずつと思われがちですが、私は大きなことをコツコツ、大きな一歩で取り組んでいくことが大切だと考えています。目先の1企画だけにみんなで取り組むのではなく、複数企画を同時に進行し、進捗状況を常に把握できるよう可視化してきました。

そして、参加人数などでイベントの成功・失敗を判断するのではなく、組合員や参加者がどう感じたかが重要です。アンケートの実施や参加者名簿をチェック、データ化することで、参加者が固定化しないように留意しました。

実施した教育文化活動

――事務局が一丸となって、情報を駆使し「JAファンづくり」を実現していたのですね。豊かな活動を支える事務局づくりの秘訣はどんなことでしたか

事務局で一番大切なのは、イベント終了後の検証で不都合があった場合、「なんであの時にしなかったのか」「言っていたのに」と責任転嫁しないこと。教育文化活動は、個人でおこなうものではありません。理想はみんなで同じ方向を向いて行動することです。反省・結果討論会は必ずおこなっていましたが、その内容が日常会話でできれば最高ですね。

活動は、熱く、「楽しく」。少人数の事務局でも、皆さんの心に響く活動をめざして、JAの根幹をなす活動の1つである教育文化活動に取り組んできました。

――活動は、熱く、「楽しく」。今中さんの取り組みを体現するようなお言葉です。そして、女性会本部活動の再開・活性化にも尽力されました。

女性会活動も、「楽しく」が肝心です。楽しかったら、また来てくれるのです。

一時休止していた本部活動を、平成21年4月に再開・活性化しました。

全体イベント「エコロジー研修会」や「ふれあい日帰り旅行」を実施し、特に後者では、長島温泉(三重県)を訪れ、各支部のサークル活動報告会を開催。各支部の活動を再認識しました。

(令和3年3月31日)女性会組織図
(令和3年3月31日)女性会組織図

次年度、女性会文化交流会で7支部長が各支部の活動体験を発表しました。以降、文化交流会で活動体験発表を適時、実施しました。
結果として、各支部の連携が図れるようになり、2018年「家の光クッキング・フェスタ」の実現に至りました。

また、「家の光読書ボランティア講座」(養成・スキルアップ)の受講を経て、各支部で地区の保育園、幼稚園で『家の光』企画「親と子の童話」と「家の光食農教育紙芝居」を題材に活動するグループが誕生し、現在でも活動を続けています。そうした活動が評価され、大阪府家の光大会、全国家の光大会にて体験発表をするにいたりました。

女性会組織図[PDF]
女性会本部活性化により実現した「家の光クッキング・フェスタ」。スタッフ36名、参加者200名で開催。スタッフには中央会職員、JA役員の姿も。「より一層の一体感、連帯感を実感しました」(今中氏)
女性会本部活性化により実現した「家の光クッキング・フェスタ」。スタッフ36名、参加者200名で開催。スタッフには中央会職員、JA役員の姿も。「より一層の一体感、連帯感を実感しました」(今中氏)

すべてはJAファンづくりのために

――JAグリーン大阪の教育文化活動のコンセプトは、「すべてはJAファンづくりのために」。とてもシンプルで力強いフレーズです。

JAの最大のテーマは、組合員が抱いている欲求や困り事に対し、いかに事業を駆使して役に立つ提案ができるかだと実感してきました。特に入職当初は、信用事業等に同業他社と足並みが揃っていないところがあり、他企業にできることがなぜできないのか、どうしたらカバーできるのかを常に考え、自分にできることを工夫してきました。ヒントは、社会にあります。

多種多様な組合員や利用者、地域住民がおられる中、一辺倒な方策でJAの方を向いていただくなど不可能です。地道なイベントの実施や活動によりJAファンへの「心の火種」ができればと、「おもてなし」の精神で取り組んできました。

――教育文化活動は「おもてなし」の精神からはじまると考えるのですね。JAファンの存在を実感したエピソードの中でも、印象深いものはありますか。

女性会や農業まつりなどいろんなイベントで実感することはたくさんありますが、最近のことでは令和2年1月にLINE公式アカウントを立ち上げ、3カ月で1,000人超の登録を達成した時です。事業活動や広報活動・イベントに、みんなで継続して根気よく取り組んできた成果だと実感しました。

また、LINE公式正規代理店の担当者と知り合い、導入前に運用について考察したことも要因のひとつです。導入後もLINE公式正規代理店とすぐに相談できる体制をとり、人と人とのつながりで企業と友好な関係を築いています。金額で表せないところではありますが、ここでも、JAファンづくりのコンセプトが生かされています。

――関連企業とも、JAファンづくりの精神でかかわっていらっしゃるのですね。

「女性会文化交流会」の様子。
「女性会文化交流会」の様子

皆さんは、JAファンといえば組合員や利用者、地域住民が対象だと思っておられるかもしれませんが、私はJAと関係するあらゆる機関や企業、またその従業員の皆さんも対象だと考えます。

例えば、先ほどお話しした「女性会文化交流会」の会場となるホテルで、閑散期を選ぶなどホテル側にもメリットがあるように開催しています。また、交流会終了後に「会場が気に入った」と言って、そのホテルを個人的に利用する会員も多くおられます。そうしてできたご縁がホテル職員にも喜ばれ、JAとのつながりを大切にしていただくことへとつながっています。

――まさに、Win-Winの関係性ですね。

人づくりと人づきあいが大切で、絶えずお互いのことを考えて行動することが、JAファンづくりの重要点と思ってきました。ですが、先に挙げたLINEやホテル等の例はまれで、ほとんどが期待するような結果が返ってこない一方通行です。根気よく工夫する。いずれ実る。「すべてはJAファンづくりのために」です。

教育文化・家の光プランナーへのメッセージ

――最後に、現役プランナーのみなさんへエールをお願いします!

活動は「楽しい」が一番。楽しいと笑顔が出て、アイデアで溢れます。喜んでいただけます。活動が楽しくなって、そうするとまた次の活動へのサイクルが生まれます。

私はずっと思ってきました。JAが好きな職員でいっぱいにしたい。JA職員にこそ、JAファンになってもらいたいのです。全国にたくさんの仲間がいます。全国の職員の輪、ネットワークを作りたいですね。全国には参考となる事例がいっぱいあります。

JAグループには歴史があり、経験があります。まさにシンクタンクです。その中でも最強アイテムといえるのが、教育文化活動です。

JAファンづくりにとって、教育文化活動は大きな武器です。大きすぎて手に余しますし、即効性はありません。でも効果は抜群です。コツコツ継続しましょう。わたしは大きくコツコツ進めることに努めてきましたが、活動のスピードは自分が決めるものです。あなたは、「新幹線」「特急」「急行」「普通」どの列車を選びますか。

重要なのは「スーパースター」のプランナーではなく、根気よく活動する集団だと私は思います。私は1人では何も成し遂げられません。1人で活動するのではなく、JA職員・関連企業と、みんなで活動し「力」を結集しましょう。

各JAには先輩の多くの活動があり、だからこそ今、教育文化活動が息づいています。いろんなところに土台があるので、活用してください。そして、次世代に教育文化活動のバトンをつなげるのがプランナーの大きな役目の1つです。

5月中旬にオンライン形式で取材をおこなった
5月中旬にオンライン形式で取材をおこなった

お知らせ

現役プランナーを対象に、「令和4年度『教育文化・家の光プランナー』専修講座」を2022年7月中旬~9月末の期間でオンライン配信します。今中秀典さんも報告者として登壇。より実践的な教育文化活動の進め方についてお話いただきます。詳細は、追ってプランナーのみなさんにご案内します。

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