【提言】JAの未来づくりと教育文化活動進化の方向白石正彦 東京農業大学名誉教授

白石正彦 東京農業大学名誉教授

東京大学大学院 教授 鈴木宣弘

しらいし・まさひこ/英国・オックスフォード大学農業経済研究所客員研究員、ドイツ・マールブルク大学経済学部客員教授、国際協同組合同盟(ICA)・協同組合原則・宣言検討委員会委員、日本協同組合学会会長、全国農業協同組合中央会・JA経営マスターコース・コーディネーター、農林水産省・農林水産祭中央審査委員会委員、参議院・農林水産委員会-農協改革2法案について-参考人等を歴任。現在、東京農業大学総合研究所農協究部会会長、国際農業農村協同組合学会ISARCS会長等として活動。

「持続可能な農業・地域共生モデルづくり」に向けていかに取り組み、結実させるか――。そのために、協同組合の組合員・役職員が市民や自治体と連携して、生命産業である農業と協同組合の価値を大切にする教育文化活動による組織文化の革新に取り組むことが求められています。

持続可能な農業・地域共生とJAグループ運動の使命

昨年10月の第29回JA全国大会では、「持続可能な農業・地域共生の未来づくり」の3カ年計画と2030年ビジョンを決定しました。地球温暖化防止問題、新型コロナウイルスの世界的蔓延抑止問題さらに非人道的なロシアのウクライナ侵攻問題が同時に進行中で、想定外の地球規模の諸困難な客観的条件の課題を注視しつつ協同組合としての本物のJAづくり(JAの主体的条件づくり)が問われています。

2020年から2030年に向けてJAの正・准全体の組合員数は2.9%減少に留まるが、そのうち正組合員数は約20%減少し、組合員構成では、正組合員比率が現状の4割から3割強になると推計しています(JA全国大会議案)。

このため、JAグループでは多様な正・准組合員の男女共同参画型の組織的結集力を高め、農業中心の多様な家族農業経営・法人経営と農村資源活用型の半農半Xのいきいきした担い手づくりを戦略の中心軸に置く必要があります。その成果が国民的関心の国消国産の農産物の安定供給(食料自給率向上)と内橋克人氏(経済評論家、2021年逝去)が提唱された地域循環型FEC(食料・エネルギー・福祉)自給圏づくりの潮流を広げ、さらにその担い手としてJAと各種協同組合の組合員・役職員を中核に市民・自治体と連携した各地域個性発揮の持続可能な農業・地域共生モデルづくりに結実することを明確にする必要があります。

JAグループの教育文化活動進化の方向

第1に、JAグループの教育文化活動進化の方向で注目されるのは、昨年度の家の光文化賞を受賞した鳥取県JA鳥取いなばと福岡県JAみなみ筑後ではJA女性組織から地元の農業委員会会長に就任し、さらに両会長はJAの理事を兼務し活躍している点です。

JAの組織文化の体質改善の方向は、JAの組合長に女性が選出され、日本の男女共同参画社会の潮流に向けてJAがリードする運動を目指す必要があります(現在、女性組合長は富山県JAなのはなの1名)。

第2に、青壮年部の活動が活発なJAは、中高年の農業者組合員が元気をもらい地域農業が活発化しているという声を聴きます。『地上』(2022年4月号)にJA全青協会長・副会長を歴任した6名の特別座談会が掲載され、そのうち3名は現在、JA組合長として活躍されています。

JA青壮年部の活性化は、このような時間軸を大切にJA組織文化の革新の原動力として戦略的に位置づけ、見える化し取り組む必要があります。

第3に、神奈川県JAはだのは、農業に関わりたいという都市住民の多様なニーズに応え、地域農業の活性化を目的に、秦野市役所とワンフロアーで都市農業センターをJA敷地内に開設し、はだの市民農業塾(新規就農・基礎セミナー・農産加工の3コース)を開き、5年間で農産加工コースを除く修了者は360人で81人が新規就農しています。さらにJA独自で、協同組合基礎講座、組合員講座、専修講座を開設し、2,404人が修了しています。他方で、准組合員も集落組織(生産組合)のメンバーとしており、JA組織基盤から正・准組合員の一体型のJAの組織文化の革新に取り組み、このような運動を全国に広げる必要があります。

JAグループの教育文化活動進化の方向は、JAの組織文化の革新運動であるべき点を明確にする必要があります。

公開日:2022/05/02 記事ジャンル: 配信月: タグ: /

この記事をシェアする

twitter
facebook
line
ページトップへ